2018 Fiscal Year Research-status Report
ランタニドナノ粒子の光特性を利用する膜タンパク質光操作分析法の創発
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18K19092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 岳昌 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40302806)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | アップコンバージョン / 膜タンパク質 / 光操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
照射した近赤外光をアップコンバージョン粒子により青色光を放出する現象を用いて,既存の青色光照射により駆動する光制御システムを利用可能であるかどうかを確認するため,培養細胞を用いた検証実験を行った.具体的には,まずアップコンバージョン粒子を含むコラーゲン基板上で光制御システムを導入した細胞を培養した.共焦点顕微鏡観察下で近赤外光レーザー (976 nm, CW) を照射し,青色光駆動光制御システムの駆動を検証した.検証した光制御システムとしては,細胞膜移行システム (iLID/Sspb, CRY2/CIBN), 核内移行システム (LINuS), 細胞膜移行システム(CRY2/CIBN), タンパク質クラスター化システム (CRY2olig) を使用した.その結果,アップコンバージョン粒子を含むコラーゲン基盤上で培養した細胞において青色光駆動光制御システムが近赤外光レーザー照射により駆動することを確認した.さらに近赤外光ファイバーレーザーシステムを利用することで,最大約4 Wの近赤外光 (976 nm)を直径約1 cmの範囲に照射するシステムを構築し,光制御システムによる細胞内シグナル制御を試行した.具体的には,当研究室で開発したAkt光活性化システム (optoAkt),および遺伝子発現制御システム (GAVPO) を用いて検証実験を行った.結果,光制御に伴うAktの活性化,および遺伝子発現を確認できた.また,アップコンバージョン粒子をマウス個体に静脈注射し,各臓器の滞留時間を肝臓スライスの組織染色および蛍光観察により検証した.その結果,肝臓においては導入から24時間後でも安定して滞留していることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた(I)アップコンバージョンLNPの表面修飾と光操作ツールの開発については,概ね予定通りの成果を得ることに成功している.特に光操作タンパク質であるCRY2が,LNPの近赤外光照射により動作することが培養細胞レベルで確認することができたこと,さらに近赤外光ファイバーレーザーシステムにより光操作ツールが駆動できることが解ったことから,マウス個体内での光操作を実現するための基礎データが着実に得られたことは技術的に大きな進捗であった.また表面修飾したLNPをマウス尾静脈から導入して,安定して肝臓に滞留させる技術を確立することができた.今後は,マウス個体の外部からの赤外光照射,あるいは光ファイバー導入による赤外光照射いずれも,CRYを動作することが大きく期待できる成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,モデルとして肝臓に焦点をしぼり,肝臓の特異的膜リセプターを外部光により時間的・空間的に制御できることを実証する.マウスに光操作ツールを発現するレトロウィルスを導入して,肝臓に発現させる.また表面修飾をしたLNPをマウスの尾静脈から注入し,肝臓表面に浮遊させる.マウスの腹側から局所的に近赤外光を照射し,CRY2の構造変化を惹起させ,光操作ツールを細胞膜上で活性化または不活化できることを実践する.光照射から1時間後まで,経時的に肝臓のスライス切片を作成し,免疫染色ならびにWestern blotにより肝細胞内のシグナル活性を,タンパク質リン酸化などを指標として評価する.最終的には,マウス肝臓深部での近赤外光による光操作が実現可能であることを実験的に立証する.
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Causes of Carryover |
培養細胞を用いたLNPの光操作実験にて,夾焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡をしようしていたが,不測の故障が生じたため,当装置の修理・調整が必要となり,評価実験の再開に時間を要した.翌年度分として請求した助成金は,培養細胞を用いた光操作実験の検証のための消耗品として使用する予定である.
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Research Products
(15 results)