2018 Fiscal Year Research-status Report
超低温下でも液相固定相を有する新規超低温液体クロマトグラフィー用カラムの開発
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18K19097
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
北川 慎也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335080)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 液体クロマトグラフィー / 超低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度は物質の物理的・化学的性質を支配する重要な因子であり、超低温場での分離分析が汎用的に行うことができるようになれば、 (1)超低温下での不安定化学種の網羅的分析、(2)超低温下で特異的に働く相互作用を利用した選択的分離、(3)分子振動抑制条件による微細分子構造認識に基づく分離、(4)超低温下での種々の相互作用の評価などが可能になる。当研究室では-196℃でのHPLC分離、および保持のコントロールに成功しているが、超低温HPLCの分離性能は、通常のHPLCと比較して不十分である。本研究では、超低温HPLCの分離性能の大幅な改善を目的とし、超低温場でも十分な分離性能が得られる、超低温場においても固定相が液相である新規分離カラムの開発(および、それに併せた分析条件の開発)を進めている。 超低温HPLCにおける分離性能低下は複合的な要因により起こっている。本年度は「超低温場での種々の相互作用、および、その制御(固定相化学構造・移動相条件)に関する基礎情報の収集」として、アルキル鎖長の異なる逆相系固定相、および、修飾密度の異なるC18固定相を用いて、超低温HPLCにおける保持挙動に関する基礎検討を行った。その結果、超低温HPLCではLCよりもGCに近い保持挙動となることを明らかにした。また、超低温下では固定相となるアルキル鎖の凝集・凝固により、すべてのアルキル鎖が有効に保持に利用できない可能性が考えられたが、詳細な検討を行った結果、アルキル鎖すべてが保持に利用されている可能性が高いという知見を得ることができた。 また超低温HPLCにおける保持挙動の解明には、種々の化合物の分析が必要であるが、現在のところ超低温HPLCに導入できる試料は気体成分に限られている。気化しない成分の分析を行うため、固相抽出に基づく試料注入システムの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、(1)超低温下での保持挙動の解明、(2)超低温下でも液相となる固定相の開発、(3)移動相成分の凝集が分離挙動の与える影響の解明を通して、超低温HPLCの分離性能の向上を目指している。本年度は、(1)超低温下での保持挙動の解明について、一般的なHPLC分離に用いられる逆相固定相における保持の詳細について検討を行い、超低温下でも固定相アルキル鎖の凝集が起きていないこと、一方、保持挙動はHPLCよりもGCに近い可能性があることを知ることができた。これは新規固定相をデザインするうえで重要な知見であり、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。しかしながら、研究に用いる装置のトラブルから進展に若干の遅れが生じ、2018年度第4クオータに開始する予定であった、(2)超低温下でも液相となる固定相の開発については、取り掛かることができなかったため、全体としてはやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本研究は(1)超低温下での保持挙動の解明、(2)超低温下でも液相となる固定相の開発、(3)移動相成分の凝集が分離挙動の与える影響の解明を通して、超低温HPLCの分離性能の向上を目指している。昨年度に引き続き、(1)超低温下での保持挙動の解明を進めるとともに、(2)超低温下でも液相となる固定相の開発を行う。 また、超低温下での保持の解明に必要な、固相抽出に基づく試料注入システムの開発を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
実験に用いる予定であった質量分析装置が故障したため、急遽検出器として水素炎イオン化検出器を用いるシステムの構築が必要となった。そのため、実験計画の一部に遅れが生じたため、2018年度に使用できなかった物品費が発生した。また、国際会議で発表を行う予定であったが、日程的に合わせることができなかったため、参加を見送った。その分の予算に対して差額が生じた。 実験計画の遅れ分(物品費)については、2019年度に執行予定である。また、旅費についても適切な国際会議での発表を行う予定である。
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Research Products
(6 results)