2019 Fiscal Year Research-status Report
分子量制御とブロック共重合を可能にする直接的アリール化重合法の開発
Project/Area Number |
18K19103
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神原 貴樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90204809)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 高分子合成 / 有機金属化学 / クロスカップリング反応 / 高分子半導体 / 構造制御 / 直接的アリール化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分子半導体のアトムエコノミカルな合成手法を精密重合へと進化させる技術開発を行うことを目標とする。 触媒移動型連鎖縮合重合では、クロスカップリング反応を形成する金属錯体触媒が主鎖中を分子内移動することで、重縮合で合成されるπ共役高分子がリビング重合のように合成され、高分子半導体の分子量制御やブロック共重合化が実現できる。一方、直接的アリール化重合では、芳香族モノマーのC-H結合を直接反応点として利用してクロスカップリング反応を進行させることにより、π共役高分子のアトムエコノミカルな合成が実現できる。しかし、従来の直接的アリール化重合では、芳香族モノマーのC-H結合の活性化に100℃以上の高温条件を必要とする。高温条件では精密な触媒移動を伴う触媒反応系の制御が妨げられるため、必然的に高分子半導体の分子量や分子分布を制御することは困難である。 本年度は、芳香族モノマーの特定のC-H結合を優先的にメタル化する助触媒を導入した2元系触媒の構築に取り組んだ。触媒反応の各素反応について、化学量論的なモデル反応を行うことで精査した。その結果、ポリフルオロアレーン類のC-H結合は酸性度が高く、Ag(OPiv)などの銀塩を助触媒として添加することによって室温でも容易にメタル化し、トランスメタル化反応を介して、基質を主触媒となるPd錯体に効率よく受け渡すことを確認した。これに対し、チオフェン誘導体のC-H結合は、銀塩を添加しても室温ではほとんどメタル化しない。従って、銀塩を助触媒とすることで、芳香族モノマーの特定のC-H結合を低温でも活性化できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2元系触媒を利用することで、従来必須であった高温条件を必要とせずに、温和な条件下でポリフルオロアレーン類のC-H結合がメタル化することを確認できた点は大きな進展といえる。この反応を直接的アリール化反応に組み込むことができれば、温和な条件での重合が期待できる。また、ポリフルオロアレーン類とチオフェン類でC-H結合の反応性に差があることも確認できたことから、これらを組み合わせたモノマーを設計することで、特定のC-H結合で効率よく反応が進行し、構造制御された高分子半導体が合成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H30, R1年度の研究成果に基づき、低温で重合可能なモノマーの設計とその重合を行う。また、この触媒反応を非対称なAB型モノマーの重合に適用する。これによって、直接的アリール化重合を触媒移動型連鎖縮合重合へと展開し、高分子半導体の分子量制御とブロック共重合を可能にする合成技術の開発を進める。
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Research Products
(8 results)