2019 Fiscal Year Research-status Report
超高分子量バイオポリマーを用いた高強度かつ高ゴム弾性を有する生体吸収性繊維の開発
Project/Area Number |
18K19104
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 忠久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30281661)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 微生物産生ポリエステル / 生分解性繊維 / 高強度繊維 / 高弾性繊維 / 環境分解性 / 生体吸収性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は資源循環システムを構築できる、微生物産生バイオポリエステルを研究対象としている。P(3HB)共重合体の一つに4-ヒドロキシブタン酸 (4HB) を導入したポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート] (P(3HB-co-4HB))がある。昨年度までの研究により、P(3HB-co-4HB)は伸縮性を有するフィルムになることを発見した。本年度は、(1)新規溶融紡糸法の開発と大型放射光による高次構造解析に基づいたP(3HB-co-4HB)の高強度・高弾性繊維の開発と、(2)環境分解性と(3)生体吸収性の評価を目的とした。 (1)溶融紡糸繊維の開発:P(3HB-co--4HB)の溶融工程中の熱分解は初期段階ではランダム分解が進行し、その後0次分解が進行していることを明らかにした。熱分解を抑制した新規な溶融紡糸法により、世界で初めて伸縮性を有する生分解性繊維の開発に成功した。この繊維は2~3倍の伸縮性を有するだけではなく、100 MPa程度の十分な引張強度 (真応力:300 MPa程度) を有していた。大型放射光施設のX線を用いた高次構造解析から、伸縮性は、分子鎖が2回らせん構造 (α構造) から、長さが2倍近く伸びた平面ジグザグ構造 (β構造) へと変形しやすくなったことが起因すると考えられる。 (2)環境分解性評価:一般的に生分解性プラスチックとして知られているポリ乳酸は、東京大学の三四郎池の水では分解しないことがわかった。一方で、P(3HB)やP(3HB-co--4HB)はBOD生分解度が70%以上、重量生分解度が100%を示し、完全に微生物分解されることが確認された。 (3)生体吸収性評価 :開発に成功した繊維を共同研究先に依頼して実験用ミニブタに縫合してもらったところ、炎症反応が見られず良好な生体吸収性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高強度・高弾性繊維を作製する新しい溶融紡糸法の開発に成功した。強さと伸縮性を同時に満たす生分解性繊維は初めての例である。また、それらの環境分解性と生体吸収性の評価も始めることができたことから、当初の計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、高強度・高弾性繊維の発現機構を大型放射光の広角および小角X線回折により解明する。さらに、環境分解を荒川河川水、東京湾の海水などへ展開する。生体吸収性評価については再現性等を検討する。
|
Causes of Carryover |
3月に予定していたアメリカ化学会に新型コロナウィルスのため行くことができなかったために差額が生じた。 2020年12月に参加予定であるPacifichem2020(ハワイ)に参加する予定である。
|