2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of bio-absorbable fibers with high strength and high elasticity from ultra-high molecular weight biopolymers
Project/Area Number |
18K19104
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 忠久 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30281661)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 生分解性プラスチック / 微生物産生ポリエステル / 生体吸収性繊維 / 伸縮性繊維 / 大型放射光解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で吸収され、人体に害を及ぼさない、生体吸収性材料はこれまでもいくつか開発されている。しかしながら、手術用縫合糸に着目してみると、強度に乏しい、硬くてうまく結べない、結べたとしても結び目が大きく異物感がある、さらに時間と共にほどけてくるなど、多くの課題を抱えている。 糖や植物油などのバイオマスを出発原料とし、微生物体内で生合成される微生物産生ポリエステルは、生体吸収性を有する生分解性プラスチックとして注目されている。本研究では、ポリ[(R)-3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート] (P(3HB-co-4HB))を用いて、新たな溶融紡糸および延伸法を開発することにより、世界で初めて2~3倍に伸び縮みする生体吸収性繊維の開発に成功した。この生体吸収性繊維は大人の力でも切れない十分な強さを有しており、抜糸不要な手術用縫合糸などの医療材料への展開も大いに期待できる。実際に、作製した繊維を医療従事者に触ってもらったところ、強度、結びやすさ、結び目の大きさなど、さまざまな観点で従来の手術用縫合糸に匹敵あるいはそれ以上の性能がある可能性を示唆された。 さらに本研究では、伸縮性のメカニズムを解明するため、大型放射光(SPring-8)において、伸縮性繊維をサイクル試験しながらX線を照射させる動的試験を行い、その構造解析を行った。その結果、結晶と結晶の間に存在するタイ分子が荷重時(伸長時)には引き延ばされ、ランダムコイル状態から平面ジグザグ構造に変化し、荷重を除くと再度ランダムコイル状態に戻ることがわかった。 今後は、作製した伸縮性のある生体吸収性繊維がラットや豚などの体内でどのくらいの期間でどのように吸収されるかについて、検討を行う必要があると考えられる。
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