2018 Fiscal Year Research-status Report
ポリマーグラフトナノ粒子の自己組織化を利用した熱フォノニクス材料の創製
Project/Area Number |
18K19108
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
戸木田 雅利 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30301170)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 熱伝導 / ポリマーブラシ / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
絶縁固体中の熱伝導は,熱エネルギーの担い手である熱フォノンが高温側から低温側へと拡散していくことで理解される.三次元等方性固体の熱伝導率Kは,熱フォノンの平均速度<v>,平均自由行程l(熱フォノンが散乱されてから次に散乱されるまで進む距離)とK = C<v>l/3(Debyeの式)の関係にある(Cは物質の定圧体積熱容量).ところが,構造の特性長Lがlと同程度になると,熱フォノンは拡散ではなく弾道的に輸送されるようになり,熱流が温度勾配に比例するというフーリエ則が成り立たなくなる.熱フォノン輸送を弾道的にして方向制御することは,熱の異方的伝導はもちろん,熱を集めたり,拡散したりと,「熱を光のようにマニピュレートすること」を可能とし,熱制御に新たな時代をもたらす.本研究では,その基盤となる構造をポリマーブラシ付与ナノ粒子の自己組織化で大面積に創り出す. 2018年度は,ポリマーブラシ付与ナノ粒子とそのグラファイト化,空孔形成を確認した. 表面からポリアクリルニトリル(PAN)を表面開始ラジカル重合でグラフトした,粒径140 nmのシリカナノ粒子PAN-g-NPのフィルムを調製した.シリカナノ粒子が面心立方格子を形成し,かつフィルム中で格子が配向していることを2次元超小角X線散乱(USAXS)測定及び電子顕微鏡観察で測定した. 空気中280°C,その後窒素雰囲気で800°Cで処理したフィルム中で炭化したPANは一部乱れてはいるもののグラファイト構造を形成していることをラマンスペクトルで,シリカナノ粒子の面心立方格子形成を電子顕微鏡で確認した. PANが炭化フィルムをフッ酸で処理してシリカを溶出させた.グラファイト中に面心立方格子を形成した空孔の存在を電子顕微鏡で確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空孔を規則的に配列したグラファイト材料の調製法は確立できた.
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Strategy for Future Research Activity |
次にナノスケール熱散逸過程観察を行う予定であるが,試料の構造を最適化する必要がある可能性がある.
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Causes of Carryover |
本年度は試料調製法と構造確認手法の確立になったことと,購入予定の設備備品を他の経費で購入したため,予定よりも執行額が少なかった.次年度は試料調製の加速のための試薬類の購入費,構造確認のための放射光測定のための出張費,電子顕微鏡観察の委託費等の支出,成果発表関連費が増加することが見込まれる.
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