2018 Fiscal Year Research-status Report
炭素繊維を上回るスーパー繊維の設計と複合材料への応用展開
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18K19109
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山口 政之 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40401947)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | レオロジー / 動的粘弾性 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリビニルアルコール(PVA)は日本でその繊維化が研究され実用化している。そのため、古くからPVAを対象とした研究は広く実施されてきた。それらの研究によるとPVA中には水素結合が強く作用し、さらには結晶が存在する。本研究では、これを特殊な塩によって制御するという新しい概念を用いて更なる技術革新を行い、高強度で高弾性率なPVA成形体の調製を実施する。 一般的にPVAの弾性率や強度は、汎用の熱可塑性プラスチックよりも十分に高いことが知られている、また、繊維の弾性率や強度も極めて高いものの、実際の値は理論値よりもかなり低いことが知られている。これはPVA中に強く作用する水素結合に起因する現象である。すなわち、水素結合により、PVA繊維において高度な分子配向状態を得ることが困難となっているのである。この水素結合を塩との静電相互作用により弱めることで、高度な分子配向状態を達成し、高弾性率、高強度な成形体を調製する。 今年度はさまざまな金属塩を添加したPVA水溶液を準備すると共に、そのレオロジー特性を特殊な方法で評価解析することを目的として研究を実施した。水溶液を高温で測定することは水の揮発のために困難であるが、実験手法を確立し、PVA水溶液の動的粘弾性挙動を室温から60℃程度まで再現性良く測定することに成功した。得られた結果より、PVA水溶液には、からみ合い緩和よりも十分に長い時間領域に平衡弾性率が存在することを把握した。さらにその弾性率は塩を添加することによって低減することを明らかにした。平衡弾性率の存在は架橋構造の存在を意味しており、そのため加熱延伸が十分に行えなかったと考えられる。架橋構造の崩壊により延伸性に優れたPVA水溶液を得ることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定が困難と予想していた水溶液のレオロジー測定を、冶具などの工夫により再現性良く測定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
レオロジー測定については、PVA濃度、塩の種類と濃度、PVAのケン化度、温度が粘弾性的性質に及ぼす影響を把握する目的で継続実施する。 さらに湿式紡糸装置を稼働し、レオロジー特性との相関を把握する。本検討により、高配向度であり、弾性率や強度の高い繊維を得るために必要となるPVA水溶液のレオロジー特性を把握し、さらに、その水溶液を用いて湿式紡糸を実施することで本研究の一層の推進を図る。
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Causes of Carryover |
一部の装置備品について、その規格を業者と調整していたが今年度発注に間に合わず、次年度に発注することになった。また、学会参加を予定していたが次年度に延期した。これらにより次年度使用額が出たが、すでに使途(装置備品、学会参加)は決定している。
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