2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of phase-change materials based on organic-inorganic hybrid molecular solid solutions exhibiting orientationally disordered phase Transition
Project/Area Number |
18K19114
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中 建介 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (70227718)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | かご型シルセスキオキサン / 柔粘性結晶 / 潜熱蓄熱材 / 固溶体 / 熱伝導性 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の潜熱蓄熱材の課題である高コストと低熱伝導性を根本から解決するために、ナノ構造が制御された単一有機無機ハイブリッド分子として注目されているかご型シルセスキオキサン(POSS)が柔粘性結晶性転移を示す固溶体を形成するという新規技術を基盤とした従来にない概念の潜熱蓄熱材を開拓することを目的として研究を行なった。その結果2018年度は、以下の成果を得た。 1)モノ置換ヘプタイソブチルPOSS化合物におけるモノ置換基の構造を系統的に変化させることによる結晶-柔軟結晶転移への影響について種々の測定法を用いた評価により解析を行った。イソブチル基よりもモノ置換基の分子量が低いほど、または高くなる程、結晶-柔軟結晶転移温度が低下することがわかった。この結果は、モノ置換ヘプタイソブチルPOSS化合物の対称性が低下するほど結晶-柔軟結晶転移温度が低下することを明らかにした。 2)かご型シルセスキオキサン(POSS) の1つの頂点が欠損した不完全POSSへのPd触媒を用いたアリール基導入法を確立した。本反応により、良好な反応率で様々なアリール基の導入が可能となり、不完全POSS誘導体の分子設計の幅が広がった。 3)8つのイソブチル置換POSSユニットをオクタジメチルシロキシ-Q8-シルセスキオキサンに結合させたスター型POSS誘導体を合成したところ、これ単体でキャストすることで光学的透明膜が得られることがわかった。粉末X線回折測定を行なったところアモルファス性であることが支持されたがDSC測定より81℃に明確な吸熱ピークが観測された。この結果は透明性を有する潜熱蓄熱材が得られることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
置換基(R)を種々変えた一置換POSS誘導体を合成し、種々の評価法によって設計多様性を有するPOSS誘導体が結晶-柔粘性結晶性転移を示す固溶体を形成するという新規技術の学術的基盤を確立するという目的に対しては概ね順調に進展している。しかし、かご型シルセスキオキサンの剛直な立方形の無機骨格によって、高熱伝導性が発現するかを検証するために、何種類かのモノ置換ヘプタイソブチルPOSS化合物のペレットサンプルを作製し、熱伝導率の測定を行なったところ、従来の潜熱蓄熱材樹脂と同程度であった。本研究では従来の潜熱蓄熱材の課題である低熱伝導性を根本から解決することを目指しているという観点からは、進展がやや遅れていると考えている。一方、モノ置換ヘプタイソブチルPOSS化合物で構成される潜熱蓄熱材はその結晶性のため、不透明である欠点が、8つのイソブチル置換POSSユニットをプロピレン鎖でオクタジメチルシロキシ-Q8-シルセスキオキサン(1)に結合させたスター型POSS誘導体を新たに開発したところ、光学的透明性を示しながら80℃付近に明確な吸熱ピークが観測されるという特異な挙動を示すことを新たに見出した。その機構は不明であるが、本結果は当初の期待以上の成果である。以上の2つを総合的に判断して概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)従来の潜熱蓄熱材の課題である低熱伝導性を根本から解決することを目指して、かご型シルセスキオキサンの剛直な立方形の無機骨格が分子間で効果的フォノン熱伝導を発現できる構造と置換基の探索を行う。単一のPOSS誘導体結晶微粒子を柔粘性結晶状態でプレス成形することで均一薄膜を作製し、既存設備を用いた乾式自動密度計測定とDSCによる比熱、依頼測定による熱拡散係数の測定を行う。これらより熱伝導率を算出し、分子構造と熱伝導率との関係を明らかにすることで、効果的フォノン熱伝導達成の分子設計指針を確立する。別途予備的検討により水素結合等の分子間相互作用が効果的フォノン熱伝導に有効であることが示唆されている。そこで高熱伝導の熱伝導率評価による設計指針の確立イソブチル基からフェニル基含有POSS誘導体に変えることで比熱容量が高熱伝導材料並に大きく低下するという結果を得ており、高熱伝導性が十分期待できる。 2)POSS固溶体結晶の作製と潜熱蓄熱材の開発:再沈殿法や混練法により、上記1)の知見を基に潜熱蓄熱材として期待できる複数のPOSS誘導体の組合せによる固溶体結晶の作製を行い、熱交換効率および機械的安定性に優れた潜熱蓄熱材を開拓する。 3)光学的透明性を示しながら潜熱蓄熱材として機能することを見出した8つのイソブチル置換POSSユニットをプロピレン鎖でオクタジメチルシロキシ-Q8-シルセスキオキサンに結合させたスター型POSS誘導体の熱伝導率を評価すルことで、熱交換効率および機械的安定性に優れた潜熱蓄熱材への可能性を見出す。
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