2019 Fiscal Year Annual Research Report
New Concept of a Crystallization Agent Based on Understanding of Mechanisms of a Liquid-Type Diluent of Enhanced Crystallizability of Polymers
Project/Area Number |
18K19115
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 伸一 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 教授 (90215682)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子結晶 / ポリ乳酸 / 結晶化促進 / 可塑剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリ乳酸は、バイオベースポリマーの代表選手であり、現在、実用化が最も進んでいる。しかしながら、強度や耐熱性が不十分である。また、結晶化が終了するまで時間がかかり、溶融紡糸した繊維を巻き取った状態で保存している間にゆっくりと結晶化が進行してしまう結果、体積収縮を引き起こし、巻き取った糸がきつく引き締まって取れなくなってしまうという、「巻締まり」と呼ばれる問題が発生することが知られている。一方、耐熱性が不十分であることも融点が低い(170℃程度)ことに起因している。ポリ乳酸繊維を衣服にした場合、アイロンの温度(180~210℃)に耐えることができず破れてしまう。これらの課題を解決するための方策として、添加剤を混合して結晶化を促進させる方法がとられている。本研究では、バイオベース材料を用いたポリ乳酸の結晶化促進について、結晶化促進の新概念を提唱する。それは、液体状態の添加剤による結晶化促進である。通常、結晶化促進剤は固体状態で機能するので、液体状態で促進効果があるという結果はこれまでに報告されたことがなく、全く新規な現象である。Hoffman-Lauritzenの理論によると、結晶ラメラ中でのポリマー鎖の折りたたみが規則正しい場合は、臨界核の厚みが減少し、結晶化のエネルギー障壁も低下する。それゆえ、核形成が促進され、誘導期が減少し、結晶ラメラの厚みの成長速度も増加し、結晶化度の増加率(結晶化速度)も増大することが説明できる。つまり、液状添加剤が1%程度存在する状態で結晶核が形成される際に、その添加剤分子がポリマー鎖の折りたたみをスムーズにするように作用したと説明することができる。
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