2018 Fiscal Year Research-status Report
Creation of palladium nanocluster-substituted polyacetylene hybrid, and development to functional materials
Project/Area Number |
18K19121
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
三田 文雄 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (70262318)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 高分子合成 / 高分子触媒 / パラジウムナノクラスター / カップリング反応 / 共役高分子 / ポリフェニレンエチニレン / ポリフェニレンビニレン / ポリアセチレン |
Outline of Annual Research Achievements |
直径が1-2 nm程度の遷移金属のナノクラスターは,金属の表面露出原子の割合が高く,直径100 nm程度の金属粒子に比べ,著しく高い触媒活性を示す。金属ナノクラスターの多くは,リン・硫黄原子をもつ低分子化合物などで安定化させることにより調製されてきたが,調製操作の簡便性ならびに生成する金属ナノクラスターの粒子径の均一性と安定性は必ずしも良好とは言えなかった。これに対し,2011年にN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を還元剤および反応溶媒として用いるパラジウムナノクラスター(Pd NCs)の簡便な調製方法が確立された[大洞ら, Chem. Commun. 47, 5750-8211;5752 (2011)]。報告者は,DMFにより配位安定化されたPd NCsを触媒に用いる薗頭-萩原カップリング重合,溝呂木-Heckカップリング重合を検討し,数平均分子量数万~数十万のポリフェニレンエチニレン,ポリフェニレンビニレンを高収率で合成することに成功している[Macromolecules 50, 4083-4087 (2017)]。優れた触媒活性を有するPd NCsと,光電気的特性を示す共役高分子である置換ポリアセチレンの複合体の報告例はこれまで全くなく,その性質と特徴は触媒化学・有機金属化学・材料科学の観点から興味深い。2018年度は,Pd NCsを配位したポリ(p-エチニルアニリン)を調製し,それを触媒としてヨードベンゼンとスチレンの溝呂木-Heckカップリング反応を行った。対応するカップリング化合物がほぼ定量的な収率で得られ,置換アセチレンポリマーに配位されたPd NCsの触媒作用を実証できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)により配位安定化されたPd NCsと,置換アセチレンポリマーの高分子錯体の調製と,溝呂木-Heckカップリング反応をはじめとするカップリング反応触媒活性の確認を計画していた。研究はいかに記すように,ほぼ計画どおり進行した。 3つのルート,A: 4-エチニルアニリンとPd NCsを配位させ,ロジウム触媒でアセチレン重合, B: tert-ブトキシカルボニル基(Boc)でアミノ基を保護した4-エチニルアニリンをロジウム触媒で重合し,トリフルオロ酢酸でBoc基を除去後,Pd NCsを配位, C: フルオロレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基でアミノ基を保護した4-エチニルアニリンをロジウム触媒で重合し,ジエチルアミンでFmocを除去後Pd NCsを配位 で調製したポリ(4-エチニルアニリン)⊃Pd NCs-A, B, Cをそれぞれ調製した。サイズ排除クロマトグラフィー,動的光散乱,NMR・IR・UVスペクトル,X線光電子分光・透過電子顕微鏡測定により,Pd NCsを配位したポリ(p-エチニルアニリン)を調製できたことを確認出来た。これらの高分子錯体を触媒に用いて,ヨードベンゼンとスチレンの溝呂木-Heckカップリング反応を行い,ほぼ定量的な収率で付加生成物を得ることに成功した。これらの高分子錯体を触媒としてヨードベンゼンとスチレンの溝呂木-Heckカップリング反応を行った。溝呂木-Heck反応において,ルートBで得られた高分子錯体を触媒に用いた場合の生成物の収率が最も高かった。ルートA,Cで得られた高分子錯体を触媒に用いた場合の生成物の収率は,Pd NCsを用いた場合よりも低かった。合成経路の差異がPd NCsの凝集やポリマーの配位様式に差をもたらしていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度に引き続き,サイズ排除クロマトグラフィー,NMR・IR・ラマン・紫外可視吸収・蛍光・X線光電子分光,動的光散乱,サイクリックボルタンメトリー,密度汎関数法に基づく計算機シミュレーションをGaussianプログラムを用いて実施し,生成した置換ポリアセチレンの分子量および分布とサイズ,主鎖の幾何構造(シス/トランス)を解析し,Pd NCsへの配位がポリマーの光電気特性に及ぼす影響を明らかにする。ポリマーが3次元的な球面構造を効率よく形成していないと判断された場合には,少量の二官能性モノマーを共重合させ,分岐構造を導入する。 2018年度に検討した触媒反応の範囲を薗頭-萩原カップリング反応,鈴木-宮浦カップリング反応等に広げ,本触媒系の有用性,一般性を明らかにする。置換ポリアセチレンとして, ポリ(4-エチニル安息香酸), ポリ(4-エチニルベンジルアルコール)等の酸性あるいはヒドロキシ基を有するフェニルアセチレンモノマー重合体を検討し,ポリマー側鎖の置換基がPd NCsの配位に与える影響を調べる。さらに,光学活性基を置換するポリアセチレンの配位したPd NCsを調製し,触媒反応における不斉誘起の可能性を探究する。 Pd NCsは通常の金属粒子とは異なり,水にも分散・溶解する特徴を有している。上述のPd NCsを配位した置換ポリアセチレンを酸性水で処理してPdを除去し,ナノスケールの空孔を有する置換ポリアセチレンマトリックスを作製する。空孔のサイズをX線回折により分析し,適切なサイズの低分子ならびに金属イオンの包接を試みる。低分子,金属イオンとの会合定数を温度可変NMRおよび紫外可視吸収分光法にて算出し,置換アセチレンモノマーの通常の重合により得られた置換ポリアセチレンと比較検討することで,ナノスケール空孔に起因する包接能を評価する。
|
Research Products
(10 results)