2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K19128
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥本 司 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60271029)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | I-III-VI族半導体 / 量子ドット / エネルギー変換デバイス / 組成制御 / ヘテロ接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子ドットとも呼ばれる半導体ナノ粒子は、粒径が1~10 nmのサイズ領域の微粒子であり、バルク材料とは異なる電気的・光学的特性を持つ。現在、比較的低毒性の元素で構成されるI-III-VI族半導体ナノ粒子が注目を集めており、LEDやEL素子、生体イメージング用の発光性マーカーなどへの応用が期待されている。本研究では、多元素からなる Ag-(In,Ga)-Se半導体(AIGSe)に着目し、金属カチオンの種類と含有量を制御することで、得られる量子ドットの電子エネルギー構造と光学特性の自在制御を試みた。 対応する金属塩とセレン化合物を、オレイルアミン中に分散させ、200~300℃で熱分解することによって、 AgInSe2と、これよりもEgが大きなAgGaSe2との間で固溶体を形成させて量子ドットを合成した。この際、用いる金属前駆体の仕込み組成比を制御することによって、得られるAIGSe量子ドットの組成を制御した。 得られたAIGSe量子ドットの吸収スペクトルは、In含有量を小さくすると吸収スペクトルが短波長シフトし、量子ドットのEgが連続的に増加した。大気中光電子収率分光測定により量子ドットの電子エネルギー構造を求めると、In/(In+Ga)比が減少しても価電子帯上端の電位はほとんど変化しないが、伝導帯下端電位はより高エネルギーにシフトした。このように、多元固溶体であるAIGSe量子ドットでは、粒子組成を制御することで、光学特性と電子エネルギー構造を自在に変調できることがわかった。さらに予備的ではあるが、他の組成のI-III-VI族量子ドットとの間で接合を形成させ、ヘテロ接合量子ドットの作製ができることも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低毒性半導体として注目されているI-III-VI族半導体の1つである Ag-(In,Ga)-Se半導体(AIGSe)について、高品質な量子ドットの合成に成功し、その光学特性を粒子組成によって制御できることを明らかにした。現在、得られた量子ドットを用いてエネルギー変換デバイスの開発を行い、高効率化を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
他の金属・半導体とヘテロ接合を形成させることによって、量子ドット内部に生じた光キャリアの挙動を制御する。具体的には、低毒性多元量子ドットを基盤材料とし、これに異なる組成の半導体材料をヘテロエピタキシャル成長させることによって様々なヘテロ接合量子ドットを作製する。さらにこれを用いる超高効率な光エネルギー変換デバイスの開発を目指す。
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究において、I-III-VI族量子ドットの合成が効率よく進捗した。これによって非常に高品質な量子ドットが得られ、新たな光特性が発現する可能性を見いだした。本研究の遂行上、量子ドットの光特性に及ぼす粒子形状と組成の影響の解明は必要不可欠であるので、研究方式を見直した。これらのために当初の使用計画と異なるようになった。 次年度に繰り越した予算は、量子ドットの光特性の詳細な解明のために購入する物品費に当て、さらに効率よく研究を進展させる。
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