2018 Fiscal Year Research-status Report
溶融塩電解を利用した二酸化炭素と水からの革新的常圧ダイヤモンド合成
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18K19130
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野平 俊之 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (00303876)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 溶融塩 / 電解合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで常圧の液相からは合成例のないダイヤモンドを、高温溶融塩中において常圧で電解合成することを目的としている。本研究代表者のこれまでの研究では、実際にダイヤモンドの合成は確認されているものの、ダイヤモンド合成の最適電解条件や反応メカニズムについては、ほとんど明らかになっていなかった。本研究では、溶融塩中において炭素電析と電解水素発生を同時に行い、ダイヤモンド生成の最適電解条件を明らかにすること、さらに、反応メカニズムの解明も目的としている。 平成30年度は、まず、LiCl-KCl-K2CO3-KOH系の電気化学測定を行った。実験温度は主に700℃でとし、炭酸カリウム添加量0.2 mol%、水酸化カリウム添加量2.0 mol%で行った。サイクリックボルタンメトリーにより炭酸イオンと水酸化物イオンの還元挙動をそれぞれ検討した結果、炭素析出と水素発生が同時に起こる電位領域は、0.9-1.2 V vs. Li+/Liであることが分かった。種々の電位で試料を作成し、顕微ラマン分光よる分析を行った結果、1.1 V vs. Li+/Li付近の電位で作成した試料において、ダイヤモンド特有の1332 cm-1付近のシャープなピークが多く検出された。さらに、FE-SEM観察およびEDX分析を行った結果、炭素のみから構成される結晶状の析出物を確認した。次に、他の電解条件のパラメータとして、炭酸塩添加量を変化させて検討を行った。その結果、炭酸塩濃度は低い方がダイヤモンドを生成しやすいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイヤモンドの形成しやすい電位領域を明らかにできた。また、炭酸塩添加量の影響も明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、まず「ダイヤモンド生成のメカニズム解明」を行う。前年度の結果により、最適化されたLiCl-KCl-K2CO3-KOH系を基本として実験を行う。これまでの基板準備法としては、直径約1μmのダイヤモンドパウダーを使用して手作業で傷つけ処理を行っていた。この方法は再現性や処理速度に課題があるため、再現性・処理速度に優れ、ダイヤモンド核発生の促進も期待できる「ナノダイヤモンドパウダーを用いた超音波処理」を導入する。この基板を用いて、1.1 V vs. Li+/Li付近の複数の電位で定電位電解により試料を作成する。この際、電気量密度の低いものから高いものまで複数の条件で電解することで、ダイヤモンド生成の初期過程および成長過程を調べる。分析手法は、顕微ラマン、FE-SEM、EDXを主体とし、特に重要と判断されるサンプルに関しては、外部委託によりTEM観察も行い、生成するダイヤモンドの特徴や生成メカニズムを原子レベルでも解析する。次に、「炭素源としてCO2、水素源としてH2Oを用いる検討」を行う。電解時に連続的にガスをバブリングして、炭素源としてCO2、水素源としてH2Oを用ながらのダイヤモンド電解合成が可能か検証する。
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Research Products
(2 results)