2018 Fiscal Year Research-status Report
Introduction of Chiral Nanomorphologies into Layered Double Hydroxides
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18K19134
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
徳留 靖明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50613296)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 金属水酸化物 / カイラリティ― / ナノ粒子 / 吸着 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、多彩な機能性を有する水酸化物ナノ結晶へのカイラリティ―の導入を試みた。研究初年度においては、Ni系水酸化物をターゲットとして、カイラリティ―を有する種々の有機分子を共存させた状況下でナノ水酸化物粒子の合成を試みた。合成条件を適切に調整することで多くの組成系においてカイラル有機分子の水酸化物結晶への導入を確認することに成功した。また、検討した多くの組成系において、ナノ水酸化物粒子は溶媒に分散したナノクラスターとして得られることも明らかになった。このような特徴を併せ持つ材料群はこれまでに報告されておらず、特異な材料特性を利用した機能応用を当初研究計画にしたがって今後進める予定である。具体的には、カイラル選択的な吸着特性を有するナノプローブ粒子としての応用を検討している。 研究初年度においては、得られた結晶の構造解析や化学組成の解析に加えて反応溶液中の有機分子と金属イオンの相互作用を詳細に検討した。これにより、カイラリティ―を有するナノ水酸化物結晶の成長メカニズムに関する基礎科学的知見を得ることにも成功した。カイラル選択的な吸着現象を利用した「ナノ水酸化物へのカイラリティ―導入」も可否を併せて検討した。吸着実験に関する実験手法は研究初年度に確立している。研究目的の達成に向けた現状の問題点は、「合成したナノ結晶の化学的耐久性の向上」と「表面機能性の開拓」に絞られており、研究2年目においては、この点を解決したうえで機能応用の端緒を開くことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定以上の多くの材料群においてカイラル有機分子を含有した層状結晶の合成に成功しており、この点において当初研究計画以上の成果が見られたと言える。一方で、このようにして得られた結晶が想定以上に不安定であり、応用を検討している水系反応場においてはいずれの結晶も効果的に機能を発現しないということが明らかになった。具体的には、カイラリティーを導入した結晶が水中ではより安定な結晶へと変化しカイラリティ―が失われる。このような状況下、本研究計画の目的達成に向けて解決すべき課題は、「結晶の化学的安定性の向上」の1点に絞られたと言える。これまでに合成に成功している多くの水酸化物結晶を体系的にとらえることで、既に問題解決に向けた糸口は得ている。このように、機能応用面においては今後解決すべき課題はあるものの、基本的な材料合成や合成コンセプトの実証においては既に想定以上の成果を得ているため、研究計画全体としては「おおむね順調に進展している」と結論付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度の成果として、カイラリティ―を有する各種有機分子を取り込んだNi水酸化物ナノ結晶の合成に成功している。これらNi水酸化物ナノ結晶は溶媒に分散したナノクラスターとすることもできる。一方で、結晶表面に吸着したカイラル有機分子は応用時に共存する水により水酸化物結晶表面から容易に脱離することが明らかになった。このように、吸着や触媒特性において重要な「結晶表面の特性」に対してカイラリティ―を導入するには至っていない。現在得られている結晶においても、結晶のバルク特性が重要な影響を及ぼす電気的特性や磁気的特性においてはカイラリティ―導入の効果がみられる可能性がある。一方で、高い比表面積を有するナノ水酸化物粒子の特異な表面特性に対してカイラリティ―導入の効果を発現させるためには、水に対して安定なカイラル分子の選定をおこなう必要がある。このような観点から既に検討を開始しており、候補となる有機分子を共存させた状態での水酸化物結晶の合成を進めている。カイラリティ―導入の可否の評価は吸着測定によりおこなう。研究初年度に実験方法は確立しており、本年度も継続して検討を進める。カイラリティーを有し、かつ、粒子分散液として得られる材料に対して、タンパク質吸着特性および触媒特性を評価し新たな機能応用の端緒を開くことを本年度の研究目的とする。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも材料合成が効率的に進行し、高額な有機キラル分子、各種塩化物、高純度ガスの使用量を抑えることができたため消耗品費を低く抑えることができた。一方で、2019年4月より研究代表者の所属研究室が変更となり、各種消耗品に加えて備品(測定装置、実験器具)を追加で購入する必要が生まれている。次年度使用額として本年度分として請求した助成金は、当初計画の消耗品に加えて、追加で必要となった備品購入に充てることを計画している。
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Research Products
(30 results)