2018 Fiscal Year Research-status Report
新たな高圧合成経路によるホウ素同位体濃縮窒化ホウ素単結晶の合成と特性評価
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18K19136
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
谷口 尚 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, フェロー (80354413)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 立方晶窒化ホウ素 / 六方晶窒化ホウ素 / 高圧下複分解反応 / 同位体濃縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素の同位体効果が多角的に研究されているのに対して、窒化ホウ素(BN)結晶中のホウ素及び窒素同位体濃縮効果の研究は未踏である。同位体濃縮効果は熱伝導率に影響を及ぼすため、その基礎物性は興味深い。また10Bは中性子散乱断面積が大きいため、多様な10B濃縮物質により中性子線遮へい材、中性子線検出器等としての応用、検討が進められているが、BN結晶では良質単結晶でのホウ素同位体濃縮自体が課題である。 本研究では、六方晶窒化ホウ素(hBN)とアルカリ土類金属ホウ窒化物触媒等の既存の経路に寄らず、ホウ素及び窒素同位体を濃縮した試薬(ホウ化物、窒化物)から直接立方晶窒化ホウ素(cBN)、或いはhBN結晶を合成し、ホウ素及び窒素同位体組成を任意に制御したhBNとcBN高品位単結晶を得ることを目的とした。 入手可能なホウ素或いは窒素同位体を濃縮したホウ化物と窒素化合物によりcBN結晶の合成を目指す上で、高圧下の複分解反応プロセスに着目した。複分解反応とは AB+CD→AD+BC で表せる発熱反応であり、通常はアニオン種として窒素、ハロゲン種により新規窒化物の探索等が行われている。モリブデン製試料容器を用い、5万気圧、1500℃、30分間の複分解反応により数100μmオーダーの10B,11Bを濃縮したcBN結晶が得られた。 圧力・温度条件をhBN仕様に変更し、10B,11Bを濃縮したhBN結晶を、更に10Bと11Bを等量混合したhBN結晶を合成した。得られた結晶のラマンシフトは同位体濃縮に応じて天然ホウ素同位体試料と比較して変化しており、格子振動の非調和性への同位体効果が確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高圧下複分解反応によりホウ素同位体濃縮したhBNとcBN結晶が得られ、それぞれのラマンスペクトルの半値幅は従来の触媒法による単結晶(天然同位体)とほぼ同様で、今回得られた試料の結晶性は従来のものと遜色はない。複分解反応において、原料のホウ素同位体濃縮試薬の混合比を調整することで、hBN中のホウ素同位体濃度が自在に制御出来ることを明らかにした。同位体濃縮したhBN及びcBN結晶の同位体組成(SIMS分析による)とラマンシフトの関係では明瞭な同位体効果が得られるなど、研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
ホウ素同位体濃縮に加え、同様の複分解反応法により窒素同位体(15N)を濃縮した窒化ホウ素単結晶の合成を進める。更に同位体濃縮したhBN及びcBN結晶のラマンシフト量と同位体組成の線形関係等の理論的解析と同位体濃縮によるBN単結晶の熱伝導度評価を行う(米、テキサス大、MITとの共同研究)。
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Causes of Carryover |
ホウ素同位体濃縮した試薬の納期に4ヶ月必要とし、年度はじめに購入した試薬による結果が明らかになったのが、11月頃であった。方針が定まったため、新規分の購入を希望したが、年度内の納品が困難であるため、翌年に繰り越した。
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Research Products
(6 results)