2018 Fiscal Year Research-status Report
酵素増幅法を用いる新規がん治療・イメージングシステム
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18K19148
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片山 佳樹 九州大学, 工学研究院, 教授 (70284528)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | がん治療 / がん診断 / バイオイメージング / 分子プローブ / 薬物送達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酵素を抗体に修飾して標的部位でのみ治療、可視化ができるシステムを開発することを目的としている。初年度は、このシステムに必須な、人や哺乳類には存在しない酵素を探索した。必要とする酵素は、人に存在しないだけでなく、安定で、かつ実用的な活性を有するものでなくてはならない。そこで、データベースから種々の酵素をピックアップした結果、菌類や植物に存在するスルホキノボシダーゼが候補となった。当該酵素は市販されていないため、大腸菌を用いて遺伝子より発現し、精製して目的酵素を調整した。スルホキノボシダーゼに関しては、いかなる基質も入手できなかったため、活性評価用の発色基質も設計して、新たに合成経路を構築して、合成に成功した。この基質を用いて活性を評価したところ、通常、ELISAなどに用いられるアルカリホスファターゼと同等の安定性と活性(Km/kcat)が得られることが分かり、候補となる酵素の取得に成功した。 また、モデル酵素としてβ‐ガラクトシダーゼを用いて、抗体および酵素をビオチン化修飾し、ストレプトアビジンを介して抗体に酵素を標識する手法を確立した。そこで、次に薬剤のモデルとして、イメージングを念頭に、蛍光色素型のβ‐ガラクトシダーゼ基質を開発し、培養細胞を用いて細胞への蓄積を評価した。その結果、可視化および治療効果には十分な量も蓄積が達成できることを見出した。ただ、蓄積した色素は、細胞から時間とともに脱離することも分かった。薬剤の場合は、細胞内の標的に結合するので、この点は問題がないが、イメージングでは問題となる。 これを改善するため、種々の検討を行った結果、細胞内タンパクへ迅速に結合するタイプの分子を設計することでこれを回避できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、計画していた生体直行性のある酵素を見出し、その発現と基質の合成、活性の評価などに成功し、今後のシステム設計に重要な部分を確立できた。また、抗体への酵素の標識方法としても、一般性があり、効率の良い方法と条件を確立できた。また、イメージングに用いる際の問題点と、その解決方法についても、基本方針を見出すことに成功しており、非常に順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実際に抗体に酵素を標識してマウスに尾静脈投与して、その動態を評価して、酵素の標識方法をさらに最適化し、まず、可視化プローブを用いて、このシステムで抗体の存在する場所に可視化が可能であるかを評価する。その後、制癌剤に用いる酵素で切除可能な保護基を導入して薬理活性が抑制できる方法論を検討して、マウスにおけるがん治療効果と、正常臓器への副作用の軽減に寄与できるかどうかを検討していく。
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Causes of Carryover |
初年度、酵素探索を行って発現、精製を行うことで新規酵素を取得したが、これにより先に行う予定であった動物実験の一部が、次年度にシフトしたためその分の予算を次年度に用いることにしたため。
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