2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K19149
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松森 信明 九州大学, 理学研究院, 教授 (50314357)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 脂質ラフト / FRET / スフィンゴミエリン / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜にはスフィンゴミエリン(SM)とコレステロールに富んだ脂質ラフトと呼ばれる微小領域が存在する。脂質ラフトは、周囲の細胞膜よりも硬い相状態を有し、各種タンパク質が特異的に集積することでシグナル伝達の“足場”として機能していると考えられている。しかし、ラフト形成の生理的意義や重要性については必ずしも明確になっていない。そこで、酵素などのタンパク質の阻害剤と同様に、ラフト形成を阻害する「ラフト阻害剤」を見いだせれば、ラフトの機能や性質を探索する分子プローブとして利用できると考えた。本研究では、「ラフト阻害剤」のアッセイ法の開発とラフト阻害剤の探索を行うことを第一の目的とする。次にこのラフト阻害剤を分子プローブとしてラフト研究に供することで、ラフト形成の生理的意義を明確化する。また、脂質ラフトの生理的重要性を鑑みると、ラフト阻害剤は何らかの毒性や生理作用を示すはずである。したがって、本アッセイ法は、創薬における副作用スクリーニングとしても機能する。 最近我々は、ラフトに集積する蛍光SMの開発に成功した(J.Cell Biol.2017)。さらに、ラフトに存在する蛍光SM同士の間で脂質間蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が観察されることを見出した(Sci.Rep.2017)。この脂質間FRETを利用することで、以下のラフト阻害アッセイ法の構築が可能となる。すなわち、ラフト相に集積する蛍光SMと非ラフト相に集積する蛍光脂質をFRETペアとし、ラフト阻害剤によりラフトが解消されることによって両者が近づくと脂質間FRETが増加する。 本年度申請者は、局所麻酔薬ジブカインがラフト阻害剤であることを見出した(論文投稿中)。さらにジブカインが上記のアッセイ法でInter-lipid FRETを増加させることを確認した。つまり、人工脂質膜を用いたラフト阻害アッセイ法の骨子はほぼ完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、ラフト相に集積する蛍光SMと非ラフト相に集積する蛍光脂質をFRETペアとし、ラフト阻害剤によりラフトが解消されることによって両者が近づくと脂質間FRETが増加するとの原理に基づき、脂質ラフト阻害アッセイ法の骨子の一つを人工膜を用いて完成させることができた。これにより、マイクロプレートを用いたハイスループット化、さらには生細胞膜へと展開するための目途がたったとともに、本手法を実用化するための足掛かりを完成させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
脂質間FRETを利用することで、今年度開発したラフト阻害アッセイ法以外にもう一種類のラフト阻害アッセイ法の構築が可能となる。すなわち、ラフトに集積する二種類の蛍光SMをFRETペアとし、ラフト阻害剤によりラフトが解消されると脂質間の距離が増加し、FRETが減少することから、これを観察する手法である。今年度このアッセイ法についても検討を行ったが、現時点ではラフト阻害アッセイ法として確立するには至っていない。今後はこの手法もアッセイ法としての確立を目指す。さらに今年度開発したアッセイ法に関しても、マイクロプレートを用いたハイスループット化、さらには生細胞膜へと展開し、本手法を実用化していく。
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Causes of Carryover |
本年度は、上述のように蛍光脂質間のFRETを用いたラフト阻害アッセイ法の開発について検討を行った。その際使用した蛍光脂質は、今年度使用分についてはすでに研究室に合成品の在庫があったため、新たに蛍光脂質を合成する必要がほとんどなかった。そのため、本年度使用額は想定よりも少なく済んだ。次年度以降は、新たな蛍光脂質の調製、およびハイスループット化や生細胞への展開など消耗品の購入金額の増加が見込まれる。特に蛍光脂質の合成は蛍光基および脂質どちらも高額なため、繰越分も含めてすべて使用予定である。
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Research Products
(27 results)