2019 Fiscal Year Research-status Report
光合成の喪失と従属栄養の促進:長期継代培養による栄養性の進化
Project/Area Number |
18K19173
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤田 祐一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80222264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井原 邦夫 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 准教授 (90223297)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 光合成 / 適応進化 / 従属栄養生育 / ゲノムリシーケンス / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリアLeptolyngbya boryanaをグルコースを添加した培地で完全暗所にて生育させ、長期にわたって植継ぎを継続することで、暗所での従属栄養的生育が向上しながら、明所での光合成的生育能を失った適応派生株が単離できる。これまでに29ヶ月間暗所で植え継いだ6株に加え、新たに暗所継続培養を開始し、15ヶ月を経過した16株および7ヶ月を経過した6株の計28株について、生育および色素組成を調べた。これらの株は、共通して暗所での従属栄養的生育が元株(野生型およびdg5株)に比べて向上しているが、コロニーの色調、形態が多様であり、実際、色素組成や光合成関連タンパク質の有無などで多様な表現系を示した。これらの株からゲノムを調製し、すべてゲノムリシーケンスを行った。その結果、28株中19株で共通した遺伝子rsbUに変異が生じていることがわかった。そこで、改めて野生型およびdg5株からrsbU欠損株を単離し、その変異による効果を確認したところ、従属栄養的生育の促進および光合成生育能の低下という形質がrsbU欠損によって生じていることがわかった。RsbUは、セリンホスファターゼをコードしており、枯草菌や黄色ブドウ球菌においてストレス応答の情報伝達系においてシグマ因子を活性化することが知られている。今回のrsbUへの変異19種のうち、5種類はアミノ酸置換を伴う変異であり、これら5種類のアミノ酸残基はRsbU間で保存されている。今回のリシーケンスで見つかった変異84個のうち、16個はトランスポゾンの挿入であった。このトランスポゾン挿入を引き起こした内生のトランスポゾンは6種あることがわかったが、このうち1種のトランスポゾン転移が16個中9個を占めていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに28株の暗所適応派生株のゲノムリシーケンスを行い、その解析を進め、特定の遺伝子への変異の蓄積を見出した。このことは、シアノバクテリアにおいて光合成と呼吸に関わる代謝が、RsbUが関わる制御系のもとで調節されていることを示唆しており、新たな情報伝達系とその制御を見出す可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、rsbU欠損株をもちいたRNAseqを行い、RsbUが関わる情報伝達系で制御されている遺伝子群の特定を進める。また、rsbUが関わる情報伝達系以外に、光合成生育能の喪失に関わる遺伝子群を特定するために、rsbU欠損株を元株として暗所従属栄養条件での継続的な植継ぎを行い、派生株の収集とゲノムリシーケンスを行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度と合算して使用するが、差額が少額であるため、次年度の研究計画を特に変更しない。
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Research Products
(6 results)