2018 Fiscal Year Research-status Report
Evolutionary possibility of drug transporters from lipid transporters
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18K19176
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 泰久 京都大学, 農学研究科, 助教 (10415143)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ABCタンパク質 / 脂質輸送体 / 多剤輸送体 / タンパク質進化 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCタンパク質はATP依存的な能動輸送体であり、脂質恒常性の維持や有害な脂溶性化合物からの生体の保護等重要な生理機能を果たす。ヒトでは48種類のABCタンパク質が確認されており、その多くが脂質の輸送体として機能すると考えられている。一方、脂質輸送体と極めて近いアミノ酸配列を有しながら、様々な構造の脂溶性化合物を輸送し多剤輸送体として機能するものが存在する。多剤輸送体は抗がん剤耐性のがん細胞で確認され、がんの化学療法の大きな障壁となっているほか、投与薬物の体内動態にも影響するため創薬に置いても重要である。これまで脂質輸送体と多剤輸送体の2種類の輸送体がどの様な機構で機能を分化させてきたは明らかになっておらず、機能分化機構を明らかにできればABCタンパク質の基質輸送機構の解明という学術上の大きな課題に有用な知見が得られることに加え、薬剤開発において有用な開発指針を提示できると考えられることから社会的貢献も大きい。本研究では人為的に多剤輸送体と脂質輸送体を改変し、それぞれの機能を交換することで、機能分化において重要な要素を抽出することを目的とした。 研究初年度は基質取り込み経路に着目し、基質取り込みゲートを形成していると思われる膜貫通ヘリックスについて解析を行った。その結果、多剤輸送体には2箇所の基質取り込み経路が存在するのに対し、脂質輸送体では基質取り込み経路が一箇所しかないことが示唆された。また、脂質輸送体で基質取り込み経路として機能している領域は、多剤輸送体ではほとんど使われていないことが示唆され、基質取り込み経路が機能分化に重要である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究において、多剤輸送体が2箇所の膜貫通ヘリックスの揺らぎ運動を利用して、基質取り込みゲートを形成すること、ゲートが基質の選別にも関与することからただ基質を通過させるゲートではなく、門番(ゲートキーパー)としても機能することを示唆する結果を得ている。そこで研究初年度は脂質輸送体の基質取り込み経路に着目し、解析を行った。その結果、多剤輸送体と脂質輸送体は基本的な基質取り込み機構を共有するが、その領域が異なることを示唆する結果を得た(2019年度、農芸化学会大会)。また、本研究で得られた結果をフィードバックし、高密度リポタンパク質形成に関与する脂質輸送型ABCタンパク質(ABCA1)のapoA-I結合部位を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年度目にはゲートを形成するアミノ酸の交換変異体など基質取り込み経路の交換によって機能転換が可能であるかを検証する予定である。また、ゲート以外に重要な領域が存在するかを検討するため、網羅的な交換変異対等の解析を予定している。また、ヒトのタンパク質と平行して大腸菌由来の脂質輸送体についても解析を行い、多剤輸送体への改変が可能であるかを検討する。
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Causes of Carryover |
研究初年度の手法改良によって解析に必要なタンパク質および精製に必要な界面活性剤を減少させることが可能となった。そこで研究2年度目には当該予算を用いて当初予定していなかった異なる多剤輸送体と脂質輸送体の比較研究、および大腸菌由来の脂質輸送体の機能改変に着手する。
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