2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of extracellular membrane vesicle production with a novel bacterium that abundantly produces vesicles and their application
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18K19178
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞外膜小胞 / タンパク質分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) アジ腸管内から分離されたShewanella vesiculosa HM13は、機能未知タンパク質P49を単一の主要タンパク質成分として含む細胞外膜小胞を生産する。本菌においてP49が膜小胞に移行するメカニズムを解析した。まず、P49のC末端にGFPを融合したタンパク質が膜小胞に移行することを確認した。次に、P49のC末端側領域を系統的に削除し、GFPとの融合タンパク質の膜小胞移行能を解析した。P49は二つの膜貫通ヘリックスをもつことが推定されているが、これらよりもC末端側の領域を削除した場合、膜小胞移行能は保持されていたが、C末端側のヘリックスを削除した場合、移行能が失われた。これらの結果から、P49のC末端側ヘリックスが膜小胞移行に関与すると考えられた。 (2) HM13株のゲノム上でP49遺伝子の近傍に存在する遺伝子群について、それらのコードするタンパク質が膜小胞形成やP49の膜小胞移行に関与するか解析した。P49遺伝子上流にはグラム陰性細菌タンパク質分泌装置として知られるⅡ型分泌装置の構成タンパク質ホモログ遺伝子群が見いだされた。それらのうち4種を破壊したところ、いずれの場合も小胞構造形成に異常は見られなかったが、P49は膜小胞に移行せず、細胞内に蓄積した。一方、P49遺伝子下流にはリポ多糖などの細胞表層成分の生合成に関与するタンパク質群のホモログが見いだされた。それらのうち4種を破壊したところ、いずれの場合も小胞構造形成に異常は見られなかったが、P49は膜小胞に移行せず、膜小胞とは異なる細胞外画分に存在した。これらの結果から、P49はⅡ型分泌装置に類似した装置によって細胞表層もしくは細胞外に移行し、P49遺伝子下流遺伝子群がコードするタンパク質群によって合成される膜小胞表層成分との相互作用によって膜小胞に移行するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外膜小胞積荷タンパク質P49の移行機構に関しては、移行に必要とされるP49の領域を見いだすことができた。また、Ⅱ型タンパク質分泌装置のホモログや膜小胞表層成分の生合成に関与すると推定されるタンパク質群がP49の膜小胞移行に関与することを明らかにできた。一方、小胞構造の形成に関与する因子の同定には至っていないことから、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
膜小胞積荷タンパク質の移行機構に関しては、移行に必要とされる積荷タンパク質の配列や構造をさらに絞り込むため、種々の改変型タンパク質について膜小胞への移行能を解析する。移行に関与するⅡ型タンパク質分泌装置のホモログや膜小胞表層成分の生合成に関与すると推定されるタンパク質群については、個々のタンパク質の機能解析を進める。小胞構造の形成に関与する因子の同定については、膜小胞中の微量タンパク質成分の小胞構造形成への関与を調べるとともに、膜小胞生産能が異なる近縁細菌種間での比較ゲノム解析や、トランスポゾン変異によって膜小胞生産能が変化する変異株を探索することによる解析を進める。
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Causes of Carryover |
当初、トランスポゾン変異によって得られる変異体ライブラリーの中から小胞形成に異常が生じたものを選抜し、原因遺伝子を同定することで膜小胞形成機構を明らかにしていく計画であったが、トランスポゾン変異法の確立と変異体ライブラリーのハイスループットスクリーニング系の確立に予想以上の時間を要したため、それらの実験を次年度に行うことし、次年度使用額が生じた。当初計画した実験を進めるための遺伝子工学用試薬、免疫化学実験用試薬、培養用試薬、プラスチック器具などの消耗品購入に使用する計画である。
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Research Products
(13 results)