2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of extracellular membrane vesicle production with a novel bacterium that abundantly produces vesicles and their application
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18K19178
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞外膜小胞 / タンパク質輸送 / タンパク質分泌 / 表層糖脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
【膜小胞生産を制御するタンパク質の同定】細菌の膜小胞生産性は細胞外環境の影響を受ける。環境への応答にはセンサータンパク質の関与が想定される。そこで、膜小胞高生産性細菌Shewanella vesiculosa HM13の膜小胞中に見出されたセンサータンパク質ホモログHM1275に着目して研究を行った。野生株ではリシン濃度依存的に膜小胞生産性が向上したのに対し、HM1275の欠損株では同等の向上は見られなかった。一方、HM1275はバイオフィルム分散関連タンパク質BdlAと配列相同性を有するため、バイオフィルム分散への関与も調べた。リシン添加条件下で野生株のバイオフィルム形成量はHM1275欠損株に対して有意に減少した。これらの結果から、HM1275が細胞外のリシン濃度を感知し、膜小胞生産およびバイオフィルム分散を誘導するものと考えられた。 【膜小胞へのタンパク質輸送機構の解析】S. vesiculosa HM13の膜小胞の主要な積荷タンパク質P49の膜小胞への輸送機構を解析した。P49が膜小胞表層を認識する可能性が考えられたため、精製P49とP49遺伝子破壊株より単離した膜小胞との結合能をin vitroで評価した。その結果、精製P49の量依存的に膜小胞に結合するP49量が増加した。ゲノム上でP49遺伝子の近傍に存在する遺伝子を破壊した変異株より単離した膜小胞との結合能も評価したところ、細胞表層糖脂質の合成過程において糖脂質前駆体を内膜内葉から外葉へ輸送する機能が推定されたWzxフリッパーゼホモログの遺伝子破壊株から調製した膜小胞にはP49が結合しないことが示された。以上の結果から、P49の膜小胞への輸送には、P49による膜小胞表層糖脂質の認識が重要であり、Wzxフリッパーゼホモログが本表層糖脂質の生合成に関与しているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜小胞の生産制御に関与するセンサータンパク質の同定や、in vitroでタンパク質を膜小胞に輸送する再構成実験系の構築、タンパク質の膜小胞移行に関与する因子の同定など、大きな進展があった。一方、膜小胞の基本構造の形成や細胞表層からの出芽・放出を司る因子の同定には至っていないことから、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子破壊実験とin vitroタンパク質輸送実験によって、膜小胞へのタンパク質輸送に関与する因子の同定を進める。膜小胞の表層において積荷タンパク質と相互作用する糖脂質を同定し、その構造解析を進める。また、P49をキャリアーとして外来タンパク質を膜小胞に輸送するシステムの開発を進める。一方、膜小胞の基本構造の形成や細胞表層からの出芽・放出を司る因子の同定を目的として、膜小胞中のタンパク質成分の膜小胞形成への関与を調べるとともに、トランスポゾン変異によって膜小胞生産能が変化する変異株を探索する。また、ペプチドグリカンと外膜の架橋を切断する酵素や曲率誘導タンパク質の膜小胞形成への関与も解析する。
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Causes of Carryover |
当初、P49遺伝子クラスター遺伝子群の破壊実験とトランスポゾン変異体ライブラリーのハイスループットスクリーニングによって膜小胞へのタンパク質輸送機構の解析や膜小胞形成に関与する因子の同定を進める計画であったが、検討の結果、実験系の変更が必要な状況となった。具体的には、膜小胞へのタンパク質輸送機構の解析に有用なin vitro再構成系を構築できたため、in vivo実験に加えてin vitro実験を行うことで関与する因子の同定を進めることとした。一方、トランスポゾン変異体ライブラリーのスクリーニングにおいては従来法で再現性の高い結果を得ることが困難であったため、新たに開発した膜小胞認識ペプチドを用いたスクリーニングを実施することとした。これらの変更により研究期間が当初計画よりも長くなり、次年度使用額が生じた。これらは上記実験に用いる遺伝子工学用試薬、免疫化学実験用試薬、タンパク質分析用試薬、糖脂質分析用試薬、培養用試薬、プラスチック器具などの消耗品購入に充てる計画である。
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Research Products
(15 results)