2020 Fiscal Year Research-status Report
Generation of super thraustochytrids specialized for lipid production
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18K19183
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沖野 望 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90363324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 洋平 九州大学, 農学研究院, 助教 (90572868)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | スラウトキトリッド / 高度不飽和脂肪酸 / ゲノム編集 / 飽和脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脂質生産に特化したスラウストキトリッドのスーパーアスリート株の選抜と遺伝子変異株の解析により、新規な脂質蓄積に関わる遺伝子を網羅的に探索すること、並びに、機能性食品やバイオ燃料の生産に使用するために必要なゲノム編集をスラウストキトリッドに適用するための技術開発を合わせて実施している。 スラウストキトリッドの選抜育種による脂質生産強化株の取得に関しては、培養液を遠心した後の上清の継代を繰り返すことで、遠心しても沈みにくくなる株を樹立している。本株の脂質を分析したところ、野生株と比較して細胞内のトリアシルグリセロール量が有意に増加していることが分かった。これらのことは、本方法により、中性脂質含量が増加したスラウストキトリッド株(スーパーアスリート株)の樹立に成功したことを示している。本年度は、スーパーアスリート株と野生株の脂質組成を詳細に比較・解析した。 外来遺伝子の導入による脂質生産に関わる新規遺伝子の探索に関しては、スラウストキトリッドにネオマイシン耐性遺伝子を導入することで、ランダムに遺伝子が破壊された株のライブラリーを作成している。本年度は、遺伝子破壊株ライブラリーに対して、スクリーニングを進めることで、幾つかの変異株を取得し、その脂質組成を詳細に解析した。 ゲノム編集による遺伝子操作法の確立に関しては、これまでにスラウストキトリッド(Aurantiochytrium limacinum)でCRISPR/Cas9システムを使用してゲノム編集が可能であることを確認していた。本年度はCRISPR/Cas9システムを使用してA. limacinumの内在性遺伝子のゲノム編集に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スラウストキトリッドの遠心による選抜育種で取得したスーパーアスリート株の解析について野生株とスーパーアスリート株の脂質組成と脂肪酸量を質量分析計とガスクロマトグラフィーを用いて詳細に解析した。その結果、育種株ではトリアシルグリセロールを中心に、パルミチン酸などの飽和脂肪酸の割合が増加していることが分かった。一方、脂肪酸量に関しては、野生株とスーパーアスリート株でDHAなどの高度不飽和脂肪酸の量は変化していなかったが、飽和脂肪酸量が増加していることが明らかになった。これらのことは、スーパーアスリート株では飽和脂肪酸の合成系が強化されていることを示している。 外来遺伝子の導入による脂質生産に関わる新規遺伝子の探索に関しては、スラウストキトリッドにネオマイシン耐性遺伝子を導入することで作成した遺伝子破壊株ライブラリーに対して、脂質量が大きく変化した株のスクリーニングを進めたところ、幾つかの変異株を取得することに成功した。脂肪酸の組成に着目して変異株の脂質組成を調べたところ、脂肪酸組成の変化から幾つかのタイプに分類された。 ゲノム編集に関しては、CRISPR/Cas9システムによりAurantiochytrium limacinumのステロール合成に関わる遺伝子である24-dehydrocholesterol reductase(DHCR24)のゲノム編集を試みた。その結果、DHCR24のゲノム編集株では野生株に比べてステロールの組成が大きく変化しており、DHCR24のゲノム編集に成功した。 ゲノム編集に関しては、スラウストキトリッドの内在性遺伝子のゲノム編集に成功したことから、目的を達成出来たと考えているが、変異株とスーパーアスリート株の解析に関しては、遺伝子レベルでの解析が遅れていることから、全体として、「やや遅れている。」に該当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スラウストキトリッドの選抜育種による脂質生産強化株の解析に関しては、これまでに飽和脂肪酸が増加することで、総脂質量が増加していることを確認しているので、その原因を明らかにするために、RNA-Seq解析とゲノム解析を実施し、野生株と比較することで、飽和脂肪酸が増加した原因を遺伝子レベルで明らかにする。 外来遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子)の導入による脂質生産に関わる新規遺伝子の探索に関しては、脂質組成に変化がある株を幾つか見出しているので、これらの中でもDHAの組成に変化が生じている株に関してゲノム解析を実施し、ネオマイシン耐性遺伝子が挿入されている位置を特定することで、DHA組成の変化を引き起こした原因遺伝子を特定する。 ゲノム編集による遺伝子操作法の確立に関しては、Aurantiochytrium limacinumにおいて、CRISPR/Cas9システムを使用して内在性遺伝子のゲノム編集が可能であることを示すことが出来たので、ここまでの内容で論文を作成し投稿する。また、別の属のスラウストキトリッドに関してもCRISPR/Cas9システムを使用してゲノム編集の技術を確立することを計画している。
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Causes of Carryover |
COVIC-19のために実験を中断した時期があり、そのために研究の進行に支障が生じて、研究を延長することになり、次年度使用額が生じることとなった。次年度は最終年度であり、計画的に使用することを計画している。
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