2018 Fiscal Year Research-status Report
Somatic cell nuclear reprogramming by maternal factors
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18K19188
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 肇伸 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (80403202)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | リプログラミング / 母性因子 / iPS細胞 / 品質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者らが新規に同定した全能性細胞特異的および受精後のリプログラミングに重要であることが示されている既知の遺伝子を用いた新規リプログラミング法を開発することを目的としている。 体細胞核移植胚から樹立された核移植ES細胞は、iPS(induced pluripotent stem)細胞よりES(ES)細胞に近いメチル化状態や遺伝子発現を示すことが明らかにされている。このことから、卵子に含まれる多数の因子でリプログラミングした細胞の方が、4つの転写因子(Oct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc : OKSM )でリプログラミングした細胞よりも「高品質」な細胞であると考えられている。これらのことを考慮し、本研究では、当研究室において同定・解析を行っている全能性を有する初期の着床前胚に特異的に発現する遺伝子群(Trim61, Pramef12, Rfpl4, Zc3h6, Zbed3, Zfp92, Klf17およびBtg4: 全能性細胞特異的遺伝子)を用いて、iPS細胞を高品質化することを試みた。今年度は、OKSMに加えて全能性細胞特異的遺伝子を発現させることにより、各遺伝子がiPS細胞の樹立効率に及ぼす影響を検討した。その結果、全能性細胞特異的遺伝子の中には、iPS細胞の誘導を促進する遺伝子と拮抗して働く遺伝子の2種類存在することが明らかとなった。今年度は、MEFに山中因子を恒常的に発現させ、各全能性細胞特異的遺伝子を「開始」、「成熟」、および「安定化」の時期特異的に発現させ、個々の遺伝子がiPS細胞の誘導効率に及ぼす影響を検討する予定であったが、「成熟期」および「安定化」の時期特異的に全能性細胞特異的遺伝子を発現させたときのデータが得られなかった。一方で、3種類の遺伝子については、全能性細胞特異的遺伝子をノックアウトしたMEFについても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は、MEFに山中因子を恒常的に発現させ、各全能性細胞特異的遺伝子を「開始」、「成熟」、および「安定化」の時期特異的に発現させ、個々の遺伝子がiPS細胞の誘導効率に及ぼす影響を検討する予定であったが、「成熟期」および「安定化」の時期特異的に全能性細胞特異的遺伝子を発現させたときのデータが得られなかった。一方で、全能性細胞特異的遺伝子の中の1つがiPS細胞の樹立効率を「開始」時期に発現させたときにiPS細胞の樹立効率が著しく上昇することを明らかにした。これらのことから、研究全体を通して判断した場合に本研究課題は「やや遅れている」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず前年度に実施できなかった「成熟期」および「安定化」の時期特異的に全能性細胞特異的遺伝子を発現させたときのiPS細胞の樹立効率の検討を行う。 iPS細胞の樹立効率を上げる遺伝子については、それらを同時発現させることにより、さらに効率が上がるかどうかの検討を行う。一方、iPS細胞の樹立効率を下げる遺伝子については、iPS細胞の樹立に阻害的な効果を果たすことが考えられるため、当該遺伝子のノックアウトのMEFに山中因子を発現させることにより、iPS細胞の樹立効率が上昇するかどうかを検討する。次に、作製したiPS細胞の品質の評価を行う。さらに、過去の報告に基づき、(1)iPS誘導4日目におけるEsrrb、Utf1、Lin28、およびDppa2 の発現、(2)樹立したiPS細胞におけるDlk1-Dio3インプリンティング領域のメチル化状態、(3)樹立したiPS細胞におけるGtl2の発現、(4)樹立したiPS細胞における8番染色体の数、(5)樹立したiPS細胞におけるヒストンH2AXのリン酸化状態、を検討することにより、iPS細胞の品質を検討する。高品質なiPSが得られた場合には、遺伝子発現を網羅的に解析するとともに4倍体補完法により、分化能についてより詳細な解析をおこなう。
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