2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of biological impacts on host plants by gut bacteria of tephritid fruit flies
Project/Area Number |
18K19217
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松浦 優 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (80723824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 英臣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70748425)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ミバエ / 腸内細菌 / 寄主植物 / 果実 / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、琉球諸島における植物寄生性ミバエ類を対象に、野生個体と寄主植物を採集してそれらに感染する細菌叢を網羅的に解析し、顕微鏡観察と組み合わせ、ミバエ体内と植物体中での腸内細菌感染の状況を調査する。さらにミバエの飼育系統および腸内細菌の感染有無を操作する実験系を確立し、ミバエ寄生と腸内細菌の有無が、ミバエの生育と寄主植物それぞれに与える影響を調査する。同時に、寄主植物の栽培実験により、ミバエ寄生と腸内細菌の存在が土壌ならびに植物に及ぼす影響を検証することによって、ミバエ体外での腸内細菌の動態と機能を解明することを目的とする。 本年度はミバエ類の腸内細菌叢をより詳細に調査するため、沖縄県沖縄島・宮古島・久米島においてナスミバエ、フクギミバエなど数種と寄主植物体を野外採集し、さらに県の農業センターに保管されていた害虫3種を含む合計8種6島50地点のミバエサンプルを整理したのち、各組織や全身、寄主植物からDNAを抽出し、16SrDNAアンプリコン解析を進めた。iSeqシーケンサーにより得られたリードを解析した結果、ミバエ類の主要な腸内細菌はプロテオバクテリアに属する細菌類であること、宿主の集団や実によって菌叢が異なること、またこれらの細菌叢は寄主植物にも存在することが判明した。並行して、同じミバエ個体から単離培養した細菌(851株)の解析と同定を進めた結果、35のOTUグループに分けられ、そのうち31が腸内細菌科に属す種であった。また、各地から採集したナスミバエをナス科植物で飼育する方法を確立し、室内での系統維持に成功した。また、フクギミバエが寄生した実を用いてプランターによる寄主植物栽培を実施し、ミバエの寄生によって種子の発芽が阻害されることがないことを確認した。これらの土壌および植物体のサンプルも回収し、次年度にDNA抽出と細菌叢の解析に用いるための準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に台風の影響で実施できなかった野外調査をなるべく行い、飼育系統拡充のためのミバエ類および寄主植物の収集に努めた。しかし、年度初旬から予定していた技術補佐員採用が後半まで決まらず、代表者のみで飼育の条件検討に大半の時間を割くことになり、DNA解析や顕微鏡観察などの作業は完了できなかった。また、16S rDNAアンプリコンシーケンスについてミバエ類のサンプルに依存する問題でプロトコルの調整にも時間がかかり、分担者と共同で行う実験・解析の予定の大半を完遂できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症拡大の影響により研究の推進自体が困難になっているが、前年度に途中まで進めていた細菌叢の解析および蛍光顕微鏡観察については研究実施が可能になり次第、継続して推進し、なるべく最終年度の中盤までの完了を目指す。その後は上述のデータ解析とそれに基づく論文作成を主に進める。飼育実験と栽培実験については、既に採集したナスミバエ系統に集中し、最小限かつ可能な範囲での実験にとどめることで短期間でのデータ取得を目指す。なお、野外調査については、近隣市町村を最小限に回るにとどめ、寄主植物と土壌サンプルの拡充を重点的に進めることでミバエ体外における細菌群衆の動態をおさえて研究を完了する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の始めに予定していた技術補佐員の採用が決まらず、雇用開始が大幅に遅れたために、人件費を多く繰越す結果となった。また、そのために代表者の野外調査数も減少した。しかし、年度の後半に採用が決まり次年度も引き続き雇用する予定であることから、主に人件費・謝金での全額使用を見込んでいる。
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