2019 Fiscal Year Research-status Report
Physiological ecology of Noctiluca having phototrophic endosymbiont
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18K19239
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
古谷 研 創価大学, 工学研究科, 教授 (30143548)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ヤコウチュウ / 赤潮 / 共生藻 / 温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
培養株を用いた室内実験と、野外観測により研究を進めた。ミドリヤコウチュウ及びアカヤコウチュウ、共生藻Pedinomonas noctilucaeそれぞれの培養株に15Nで標識されたNH4+、NO3-、Urea、Glycine(Gly)を添加し、窒素化合物の選好性を調べた。ミドリヤコウチュウおよびアカヤコウチュウの窒素取り込み速度は、NH4+、Gly、Ureaの順であり、3種類の化合物ではNH4+の取込み速度が有意に高かった。一方、NO3-を殆ど取り込まず還元態窒素に対する選好性をもつことが明らかになった。P. noctilucaeでも同様にNH4+が有意に高く、Gly、Ureaと還元態窒素は取り込んだが、NO3-を殆ど取り込まなかった。P. noctilucaeの窒素取込み選好性はホストであるミドリヤコウチュウの窒素取込み特性と適合し、ミドリヤコウチュウ細胞内はP. noctilucaeにとって好適な栄養塩環境であることが明らかとなった。 2019年9月にマニラ湾および2020年2月にパナイ島で野外観測を実施した。マニラ湾では、全般的にNH4+、NO3-、PO43-濃度が水質基準値を超えて高く、中でもNH4+濃度は8.4 - 40.2uMと顕著に高かった。塩分および湾内流れ場の解析からパシッグ川河川水またはマニラからの下水の流入により富栄養環境が形成されていることが示され、培養実験の結果とあわせると、マニラ湾では人為的富栄養化により高いNH4+濃度が維持され、表層水温も27-30°Cの範囲で変動し、ミドリヤコウチュウにとって好適な環境であることが明らかとなった。パナイ島では局所的なブルームが観察され、定性的な観察から有性生殖による個体群の増加によることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養実験は当初の予定通り順調に結果を得ており、昨年度とらえることができなかった現場における環境と生態調査も実施することができ、本研究の目的である温暖化に伴うミドリヤコウチュウ分布の北進の可能性を解析するための知見をほぼ得ることができた。しかしながら、これまでの成果をさらに発展させるためには現場における個体群動態の把握が必要であり、そのためには大規模ブルームの発生に観測時期を合わせなければならない。今年度は学事の都合でこれができなかったため、もう一年延長して、野外観測の実施機会を求めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
野外調査によりミドリヤコウチュウの個体群動態を把握して、これまで培養実験で得た成果について現場における適用性を確認する。ただし2019年度末からの新型コロナウィルスの流行に伴い、東南アジアでの観測機会の確保が難しい可能性が在る。このため、アカヤコウチュウへの共生藻の人為的導入などの培養実験も平行して行う。
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Causes of Carryover |
培養実験は当初予定通り進捗し、ヤコウチュウ増殖と水温の関係、および窒素栄養塩取り込み特性について成果を得た。一方、フィールド調査から、ヤコウチュウブルーム形成要因の解明は進んだものの、調査時期と現場のブルーム発生とが同調しなかったため海外調査の規模の縮小し次年度使用額が発生した。このため、本研究の目的をより精緻に達成するためブルームと同期したフィールド調査を実施する。併せて、培養株を用いた生理特性解析をさらに進める。
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Research Products
(3 results)