2018 Fiscal Year Research-status Report
Novel challenging toward the molecular mechanism of fruiting-body formation starting from isolation of the endogenous active substance
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18K19241
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
西村 健 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂川 政英 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30370282)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ヒラタケ / 子実体誘導物質 / 子実体形成機構 / 菌体抽出物 / 複合糖質 |
Outline of Annual Research Achievements |
キノコの子実体形成機構は今なお未解明の課題である。本研究ではキノコの菌体から劇的な子実体誘導活性を持つ物質の単離に挑み、キノコの子実体形成プロセス(栄養菌糸→原基→子実体)におけるその発現挙動を物質レベル・遺伝子レベルで把握する事を狙いとする。
研究にはヒラタケFMC246株を用いた。SMY培地による液体培養により栄養菌糸を約24g、所属機関キノコ栽培施設におけるおが粉/米ぬかを用いたビン栽培により、原基51g、子実体757gを収穫した(いずれも生重量)。なお、原基回収用にヒラタケ用栽培ビンの他、広口のナメコ用栽培ビン等も試行的に用い、いずれも収量は良好であった。回収した菌体は凍結乾燥、凍結破砕した後、各200mg前後の粉末状試料を①水、②メタノール/クロロフォルム/水系、③アセトン/酢酸エチル系による抽出に供し、①では約100mg、②では約3mg、③では栄養菌糸で約4mg、原基で約7mg、子実体で約9mgの粗抽出物を得た。これら各菌体からの抽出物をペーパーディスク(PD)法による生物活性試験に供した結果、②と③による栄養菌糸・原基・子実体からの脂溶性抽出物に活性が含まれている事が確認された(100μgをdisk添加し菌糸の集合と原基形成を観察)。
さらに②と③による栄養菌糸・原基・子実体からの脂溶性抽出物のTLC解析を実施した結果、子実体誘導活性が期待される真菌タイプのグルコシルセラミド等の糖脂質とRf値を同じくするスポットがいずれのTLC上にも確認された(展開溶媒:10%MeOH/CH2Cl2)。他方、③のアセトン/酢酸エチル系抽出物のTLC上にはRf0.2の位置に原基で強く現れ子実体で弱く栄養菌糸では出現しないスポットが確認された(展開溶媒は同上)。これらの脂溶性抽出物については子実体形成との関わりも示唆され、興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の研究計画の中で、ヒラタケ菌体の収穫と各抽出手段による粗抽出物の調製ならびに活性の有無の把握を初年度に位置づけており、初年度の計画どおりに結果が得られたことから、概ね順調にしていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の全体計画に従い次年度は活性成分の単離と構造決定を実施する。活性を含んでいる事が確認された脂溶性抽出物に的を絞り、100mgのスケールで菌体からの粗抽出物の収集を図る。このためにヒラタケ栽培による菌体収穫も適宜実施する。活性成分の分画・単離精製は主にシリカゲルカラム及びTLCによって行う。活性の有無の確認はPD法によって実施し、最小有効添加量を活性強度の指標とする。単離成分の構造決定はNMR・GC-MS等により行う。さらに栄養菌糸からキノコの子実体形成に至る各ステージ菌体における活性成分の含有量を推定すると共に、活性成分との関連が推定される遺伝子発現解析を実施する。
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Causes of Carryover |
(理由)研究用試料のヒラタケ菌体(栄養菌糸→原基→子実体)は1回の栽培で今年度分の必要量をほぼ収穫でき、これにかかる物品費と人件費が予定額を下回った等の理由により次年度使用額が生じた。
(使用計画)次年度使用額352,520円と次年度請求額1,600,000円を合わせた1,952,520円の使用計画は以下の通りである。成果発表、情報収集を国内外の学会で行う。国際複合糖質シンポジウム(8月、ミラノ)の外国旅費に35万、国内学会旅費(きのこ学会、木材学会、生物工学会等)に25万、参加登録費に15万、消耗品類(試薬、ガラス、DNA分析等)に80万、人件費に30万(2人x3ヶ月)、研究成果投稿料と印刷費に10万円程を計画している。
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