2018 Fiscal Year Research-status Report
Modeling the spatial equilibrium model for imperfectly competition: estimation of dairy food market
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18K19246
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 宣弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80304765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 幸嗣 九州大学, 農学研究院, 教授 (20274524)
佐藤 赳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30756599)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 不完全競争 / 空間均衡 / シミュレーション / 二重構造寡占 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、不完全競争構造と価格伝達について、空間均衡の理論モデルを導入し、政策的提言を行うことである。これまでの分析は流通対象を限定し、空間均衡を明らかにする研究においては多くの場合、水平的市場均衡のみに焦点が絞られてきた。これに対し、本研究では、不完全競争空間均衡モデルを用いて、流通において、市場に不完全競争構造が存在する際の空間均衡を明らかにする。当該するモデル構築には、理論研究の第一人者の協力を得て、申請者が主体となって臨む。市場構造や価格変動の効果を定量的に明らかにし、制度や価格保険制度が異なる米国と比較検討することで、社会全体の経済厚生を高める生産者組織や政府支援の在り方に、具体的な提案を行うことを目標としている。 平成30年度においては、地域別の需給が輸送費を考慮して均衡する空間均衡モデルとしてを解くことによって得られた均衡解をもとに、総合乳価と生乳供給量を計算した。酪農指定団体の複数の寡占状況にシナリオを分けたシミュレーション分析の結果からは、規制撤廃により競争が激化し、指定団体がプライス・テイカ-として行動する完全競争の場合、各地域の総合乳価が現状より10~15%程度低くなることが明らかになった。また、これにより、指定団体を排除した直接取引によって酪農家の所得が向上するという議論は正しくないことが実証された。さらに、指定団体の協調を図り、機能を強化する方策として、指定団体が統合・広域化しブロック化した場合では、乳価と生産量は大きく上昇せず、その方策は有効ではないという結論に至った。全国調整組織による完全協調の場合、あまりに乳価がつり上がるったため現実的には難しいが、飲用乳に一定の金額を上乗せする飲用乳価プレミアム方式による調整を採用した場合すれば現実的な水準で現状より高い飲用乳価と、高い生産量が実現できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の最大の課題は、本研究での挑戦となる双方寡占モデルの理論展開と、空間均衡モデルによる数値的シミュレーションである。まず、各流通過程における集中度、価格、取引量の統計データ収集や、流通主体に対するインタビュー調査を実施し、また、各主体の近接度の計測等をし、価格伝達や、小売の価格交渉力の計測を完了した。他方で、空間均衡モデルの拡張によって、逐次解法による二重構造不完全競争空間均衡モデルの推定を行い、複数のシナリオにおける均衡受給料と均衡価格水準をシミュレーション分析によって明らかにした。本研究の課題である理論的検討は着実に進展しており、その進捗は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
政策的含意の導出において、各提案シナリオの現実性や実際の政策の精緻な理解が極めて重要であることから、各方面・流通段階への聞き取りを一段と進め、現実的なシナリオの検討及びその適切なシミュレーションモデルの構築に尽力する
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