2020 Fiscal Year Research-status Report
ナノ表面制御による乳タンパク質汚れの定置洗浄(CIP)における環境負荷削減
Project/Area Number |
18K19249
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井原 一高 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50396256)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅津 一孝 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20203581)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
Keywords | 洗浄 / 牛乳汚れ / CIP / 表面粗さ / 消費エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
乳製品を対象とする食品機械において,洗浄プロセスは製品の安全性確保に不可欠である。ステンレスパイプは牛乳等の液体食品の加工に多用されるが,内部表面に汚れが付着しやすいことから,付着汚れの脱離のためにCIP(定置洗浄)という手法が用いられる。しかし界面活性剤を含む洗剤の使用やエネルギー消費から製品製造におけるコスト割合は小さくなく,これらに由来する環境負荷も大きい。本研究では,従来のサニタリーステンレスパイプよりも,表面をナノスケールまで平滑化させた磁気研磨ステンレスパイプを用いて,洗浄性の向上と洗浄時のエネルギー消費の低減を目的とした。洗浄時におけるエネルギー消費は,洗浄液を移送するエネルギーと,洗浄液を加温するエネルギーに大別される。実験では,市販牛乳をステンレスパイプ内表面に付着させた後,一定温度に保った脱イオン水を移送させ,巣パイプ表面からの汚れの脱離を試みた。パイプから排出された洗浄水の成分を定量し,汚れの脱離の時間変化を測定した。脱離率と消費エネルギーとの関係から,表面平滑化がエネルギー消費に及ぼす影響を評価した。表面粗さが0.01μm Raの磁気研磨ステンレスパイプを用いた場合,脱離率が一定割合を超えるとエネルギー消費がサニタリーパイプよりも低減されることが示された。汚れの脱離の初期段階ではなく,表面付近に付着した汚れの脱離に多くのエネルギーが消費されていることも判明し,特に洗浄プロセスの最後の段階において表面平滑化によるエネルギー低減効果が得られることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表面からの汚れの脱離における消費エネルギーの評価方法として,汚れの脱離率と消費エネルギー量との関係を図示する手法を確立した。両者をプロットすることによって,平面平滑化が洗浄時のエネルギー量を削減できる洗浄条件を見出した。この知見は,洗浄時におけるコスト削減だけではなく,二酸化炭素排出削減にも寄与する。本研究は,米国研究機関との国際共同研究のため,特に2020年度前半において新型コロナウイルス感染症の拡大が研究の進捗に少なからず影響した。しかし,日本国内で実験を進捗させ,ディスカッションをオンラインで進めることにより,研究は概ね順調に進展したと判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ナノスケールでの表面平滑化が,ステンレスパイプ内表面の洗浄プロセスにおいて,エネルギーを低減できることが示された。しかし低減できる洗浄条件は限定的であり,実際の加工設備を用いた実証試験へと展開するには,より広範な条件でのデータが必要である。汚れの脱離は,洗浄液温度,洗浄時間,洗浄液流量そして汚れ付着条件が影響すると考えられ,より広範な条件下でのデータ収集には,実験装置の改良や規模拡大が必要であると見込んでいる。可能な限りこれらを克服し,より汎用性のあるデータを収集し,食品加工における二酸化炭素削減および環境負荷低減に,洗浄プロセスからアプローチできることを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の拡大のために,一部の実験について十分に実施できなかった。使用用途としては,実験に使用する機器および消耗品を予定している。
|
Research Products
(5 results)