2019 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms linking the immune and brain synapse formation
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18K19253
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高田 健介 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40570073)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 生体防御 / 免疫記憶 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去に感染した病原体が再び体内に侵入すると、より迅速で強力な免疫応答が生じ、病原体は速やかに排除される(免疫記憶)。免疫記憶の本体は、活性化後、長期にわたって体内で維持される記憶リンパ球であるが、その迅速で強力な抗原応答を可能にする分子機構は解明されていない。そもそも免疫記憶という言葉は、免疫系がもつ病原体特異的な再感染防御機能を脳の記憶に例えたに過ぎず、脳の記憶と免疫記憶の関連が分子レベルで実証された例はない。本研究は、T細胞の記憶形成過程で発現変動を示す分子の探索から、中枢神経系に高いレベルで発現され、脳高次機能を司るニューロトリプシンに着目した。
2019年度はまず、記憶T細胞亜集団におけるニューロトリプシンの発現を検討した。卵白アルブミンに特異的なOT-I抗原受容体発現CD8T細胞をレシピエントマウスに養子移入し、卵白アルブミン発現リステリア菌を感染させた。感染30日後、KLRG1とCD62Lの発現を指標として3つの記憶T細胞亜集団を単離し、定量的PCR解析を行ったところ、すべての亜集団で同程度の発現が認められた。また、反復感染によって形成される一次記憶T細胞、二次記憶T細胞、三次記憶T細胞の間でもニューロトリプシン発現は同程度であった。一方、これらの細胞で観察されたニューロトリプシンの発現は、未感作T細胞での発現よりも有意に高かった。また、抗原提示細胞との相互作用ならびにシナプス形成にニューロトリプシンが関与するかを検討する目的で、ニューロトリプシン欠損OT-I T細胞を用いて記憶CD8T細胞を分化させたのち、卵白アルブミン由来ペプチドでパスルされた抗原提示細胞との細胞間接着を検討した。ニューロトリプシンの欠損によって記憶T細胞と抗原提示細胞の相互作用が弱まるという当初の予想とは異なり、野生型T細胞と欠損型T細胞の間で有意な差は認められなかった。
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