2018 Fiscal Year Research-status Report
The influence of cervine piroplasma on the onset of bovine piroplasmosis
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18K19257
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
横山 直明 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (80301802)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | タイレリア / シカ / 牛 / マダニ / 感染 / 小型ピロプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、北海道に生息する野生のエゾシカに感染しているシカタイレリア(シカ小型ピロプラズマ)のMPSP遺伝子を同定し、その塩基配列をもとに遺伝子診断用PCRを確立した後、エゾシカ(n=91)、マダニ(n=671)、及び放牧牛(n=767)のシカタイレリアの感染状況を明らかにするための疫学調査を行った。その結果、1)エゾシカに感染しているシカタイレリア種はTheileria sp. Sika1で、遺伝子配列がよく保存されていること、2)シカタイレリアはエゾシカに高度に感染していること(97.8%)、3)シュルツェマダニ(Ixodes persulcatus)とヤマトチマダニ(Haemaphysalis japonica)によってシカタイレリアは媒介されること、及び4)牛には感染しないことが示された。一方で、5)牛タイレリア(牛小型ピロプラズマ:Theileria orientalis)はエゾシカには感染していなかった。以上の知見から、エゾシカは牛タイレリアの運び屋にはなっていないこと、及びシカタイレリアは牛にとってリスクにはならないことが明らかとなった。
一方で、国内で経済的被害をもたらしている牛タイレリアに人工感染した牛赤血球移入マウスを用いて、牛タイレリアに感染したフタトゲチマダニ(Haemaphysalis lon-gicornis)の作出に成功した。本技術は、牛タイレリアやシカタイレリアのライフサイクルの解明やワクチン開発の進展に向けて重要なツールとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に掲げた「これまで明らかとなった事象を取りまとめて、学術的に結論づける。」と言う目標について、得られた知見を海外学術論文に掲載できたことから、達成できたと考える。さらに、疑問であった「同じ反芻動物である野生のエゾシカが、牛で問題となっている牛小型ピロプラズマ病の原因原虫である牛タイレリアの拡散に関与していないか?」、また「シカタイレリアが牛に感染し病害を与えていないか?」についての学術的な疑問を解決できたことから、当初の予定以上に進展していると結論する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、1)牛においてシカタイレリア感染の免疫応答を測定できる血清診断法を確立する。そして、2)確立した血清診断法を用いて、放牧牛のシカタイレリアの抗体保有状況を調査し、その感染歴が後の牛小型ピロプラズマ病の発病に与える影響を疫学的に解明する。また、3)シカ小型ピロプラズマを活用した牛小型ピロプラズマ病に対する新たな制御法を考案する。
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Causes of Carryover |
初年度に目標としていたシカタイレリア感染の血清診断法の確立において、その診断用抗原の標的候補としていたMPSPをコードする遺伝子が牛タイレリアのMPSP遺伝子と相同性が高く、特異性が高い診断法を確立するには新たなシカタイレリア抗原のコード遺伝子の同定が必要となった。新たな遺伝子探索に必要となる使用額として次年度に2,000,000円を繰り越した。次年度では、物品費(2,000,000円)、旅費(700,000円)、人件費(1,500,000円)、その他(200,000円)の計4,400,000円を計画している。
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Research Products
(4 results)