2019 Fiscal Year Research-status Report
Pathology of spontaneous breast tumor in tree shrews (Tupaia belangeri chinenesis)
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18K19277
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
小原 道法 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 特任研究員 (10250218)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ツパイ / 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がんは女性のがんで多く見られる悪性腫瘍で、現在1年間に新たに乳がんと診断される日本人女性は6万人を超える。根治が困難な症例も多く、適切な乳がんモデル動物で乳がんの生物学特性、治療および予防法を研究するのは急務である。乳がんモデルとしてツパイの検討を行ってきた。ツパイは、体重が約150グラムの小型哺乳動物で、ツパイ目ツパイ科に属している。ツパイは人に近い遺伝情報を持ち、ツパイの神経伝達物質の受容体は齧歯類より霊長類のものと高い相同性を持つために、毒物学とウイルス学、抗うつ薬などの前臨床研究で利用されている。また、ツパイの乳腺の生理学的特徴と発育などはヒトに類似している。 自然発症乳腺腫瘍を観察した結果、発生率は24.6%(15/61)、再発率は60%(9/15) であった。細胞診の結果、上皮系悪性腫瘍であった2個体の腫瘍組織について精査を行った。多発性の全ての腫瘍組織でプロゲステロンレセプターが陽性、91.3%でエストロゲンレセプターが陽性、4.3%がHER-2陽性であった。また病理組織学的検索と実験動物用X線CT LCT-200解析の結果、腹腔内で内分泌系腫瘍も観察された。以上の結果から、ツパイは自然発症乳腺腫瘍モデルとして有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に従って進行している。自然発症乳腺腫瘍について解析を行った結果、発生率は24.6%(15/61)、再発率は60%(9/15) であった。細胞診の結果、上皮系悪性腫瘍であった2個体の腫瘍組織について精査を行った。多発性の全ての腫瘍組織でプロゲステロンレセプターが陽性、91.3%でエストロゲンレセプターが陽性、4.3%がHER-2陽性であった。これらの解析結果について論文投稿を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
がんゲノム共同プロジェクトにおいてヒトの乳がんで明らかとなっているゲノム変異、PTEN, PIK3CA,APOBEC遺伝子変異等既知の変異に関して、ツパイの乳がん好発系や若年性乳がん発症系統においても同様の変異が生じているか、解析を行う。細胞、組織の各レベルにおける遺伝子発現プロファイルを比較し、ツパイ個体において乳がんが発症していく際に、各階層での遺伝子変化がどの様に相互に関連しているのか、明らかにする。
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Causes of Carryover |
共同研究機関との打合せ出張を予定していたがWeb会議システムの活用により不要となった。また、研究用試薬及び器材の購入に際し、キャンペーン期間を活用したので経費を節減できた。来年度は解析動物頭数が増えるのでその飼育経費と、それに伴う解析経費の増額に対応するために使用する。
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