2018 Fiscal Year Research-status Report
New method for identification of HLA-mediated immunomodulatory drugs
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18K19278
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前仲 勝実 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (10322752)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 薬剤副作用 / HLA / 免疫応答 / 薬剤過敏症 / タンパク質 / スクリーニング / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請では、HLA分子を介して異常な免疫応答を誘発する薬物の簡便で迅速なスクリーニング方法を確立し、薬剤服用による過敏症症候群の発症と固有のHLA多型との相関についての知見を得ることだけでなく将来的な予防の観点から創薬・臨床に貢献することを目指している。 H30年度には人類共通のHLA-Gを代表例として、代表者等が構築したHLAタンパク質を利用したスクリーニング法により、既存薬スクリーニングを実施した結果を受けて、疾患との関連が予想できる結合候補薬剤に着目した。この薬剤についてin vitroでのHLA-Gタンパク質を用いた巻き戻しにより、結合候補薬剤との複合体と考えられる分子を調製した。これを質量分析法による解析を進め、候補薬剤がHLA-Gタンパク質と結合を実証することに成功した。続いて候補薬剤とHLA-Gとの相互作用に起因する免疫応答機構を解明するため、ヒト細胞株を用いた評価を行うため、HLA-G発現細胞系の作成と最適化に着手した。更に、スクリーニング法の汎用性を検証するため、最も研究が進んでおり、薬剤過敏症と関連するHLAと薬剤の結合や提示されるペプチドパターンの変化が分子レベルで明らかにされている抗HIV薬・アバカビルとHLA-B*57:01多型の組合せを検証することとした。我々のスクリーニング法を適用したところ、HLA-B57とアバカビルの結合を示唆する成果を得たので、本手法をより広い汎用性を持った形に発展できる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本学所有の既存薬ライブラリーより見出されたHLA-Gと結合する26の候補化合物のうち興味深い関連性が示唆された化合物Aについて、in vitroで化合物Aを用いたHLA-Gの調製に成功し、質量分析によりHLA-Gとの結合を示唆する結果を得ている。これは開発したスクリーニング系が期待通りに機能していることを意味する。また、薬剤を用いたHLA-Gの調製が可能となったため、今後は複合体の結晶化・X線結晶構造解析へと順調に進めていくことを予定している。 一方、薬剤副作用とHLA分子の多型の関連性について最も研究が進んでいるアバカビルとHLA-B*57:01多型に対して、本スクリーニング方法を適用したところ結合を示す結果を得ている。これは本手法の汎用性を期待させる結果である。今後予定どおりに、異なるHLA分子を用いたスクリーニングを実施することを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA-Gのスクリーニング結果について、H30年度は代表的な候補化合物を用いて直接の結合を明らかにできたため、薬剤の結合を分子レベルで明らかにするための結晶化に取り組む。また、現在提唱されている免疫応答機構の鍵となる、薬剤の結合によりHLA分子に提示される抗原ペプチドのパターンが変わるかを、細胞を用いた系で質量分析法により解析する予定である。申請者は既に解析に必要な量のHLA-G-薬剤複合体を得るための細胞によるHLA-Gの発現に着手しており、まずは発現の最適化を進める。十分な量の試料が得られれば質量分析を実施する予定である。 スクリーニング手法の汎用化について、H30年度にアバカビルとHLA-B*57:01の組合せでの検証に成功している。本年度は、HLA-G同様に多型の少ないHLAや日本人に多型が多くみられるHLA分子に絞ってスクリーニングを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
汎用化を検討する実験のためのHLA-B57の発現プラスミドがOxfordから入手できたため経費を予定より使わずに済んだ。他方、当初予定していたヒト培養細胞を用いた系の最適化を進めていたが、次年度にさらにより広い条件で行うこととなったため、予算を繰り越した。
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