2019 Fiscal Year Research-status Report
始原生殖細胞におけるDNAメチル化リプログラミングの人為操作技術の開発
Project/Area Number |
18K19295
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
栗本 一基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20415152)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | PGC / エピゲノム / リプログラミング / 始原生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はES細胞のground stateでの培養を行うための培地の安定的作製条件を検討した(昨年度の研究機関移動に伴い新設した培養室を安定して動かすため)。また、すでにUHRF1の過剰発現によってES細胞の遺伝子発現がほとんど変動しないことが分かり、細胞動態にほとんど影響しそうにないことが示唆されているので、始原生殖細胞および精原細胞形成過程の遺伝子発現・DNAメチル化パターンのデータを解析し、PGC形成過程で脱メチル化されるが、前精原細胞では再メチル化されず低メチル化状態を維持するプロモーターを探索した。マウスにおいては、PGC形成過程でゲノムDNAのメチル化が消去された後、雄では前精原細胞の分化にともなってゲノムワイドに再度メチル化を受ける。この再メチル化過程でのメチル化されにくく、低メチル化状態を維持するゲノム部位は、リプログラミング過程に少しの変化があった場であっても影響を受けやすいゲノム部位であると予想される。この条件に合致するプロモーター(PGCで脱メチル化され前精原細胞で低メチル化状態を維持するプロモーター)は1,081個同定され、嗅覚受容体、鋤鼻受容体、シトクロームP450構成因子など、重要な機能カテゴリーに属する遺伝子が有意に濃縮していた。これらの遺伝子はPGC発生過程では全く発現しておらず、プロモーターの低メチル化は次世代における発現のために準備されたものである可能性があり興味深い。また、初期胚においてUhrf1タンパク質の分解に関わることが知られているPramel7は、意外なことにPGCにおいて全く発現が検出されなかった。その一方で、PRAMEファミリーに属する別の遺伝子Pramel1の発現はPGC発生過程で上昇しており、PGCにおけるUhrf1の転写後制御に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験に用いるES細胞を培養するための実験条件の再検討に当初の予定よりも難航したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ES細胞の安定的な培養条件の再設定を進め、PGCLCへの再現性良い誘導が可能かどうかを検討する。また、データ解析によって同定した遺伝子やプロモーターに関する解析のためのプライマーを設計し、UHRF1の過剰発現によって影響を受けるかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
定量的な細胞培養条件の再設定に時間がかかり当初予定した解析を翌年度に持ち越した。翌年度には2019年度に予定していた解析を含めて行う。
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