2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K19296
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅田 眞郷 京都大学, 工学研究科, 教授 (10185069)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 細胞膜 / リン脂質 / 細胞骨格 / 変形能 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫は地球上で最も多様化を遂げ繁栄している動物種であり、その中には進化過程において極度な小型化を達成した昆虫種も存在する。これらの微小昆虫も、大型高等動物と同様の複雑に構築された脳・神経組織、循環・消化器系を有している。従来、昆虫の小型化については、その形態学的な特性について研究が進められているが、その微小組織を構築する分子基盤についての研究はなされていない。申請者らは、体長数mmのモデル動物であるショウジョウバエをモデル動物として、その微小組織の構築単位である細胞の膜に着目して、その物理化学的特性の詳細な解析に着手した。 まず始めにマイクロピペットを用いて様々な細胞株における形質膜の物理化学的性質を評価した結果、ショウジョウバエやヒトスジシマカ等の小型昆虫の培養細胞は膜張力が19-28 pN/μmと哺乳類の培養細胞と比較して非常に低く、ずり応力に対しても高い耐性を示すことが明らかとなった。 次に、細胞膜の主要成分であるリン脂質について詳細な解析を行った結果、ショウジョウバエおよびヒトスジシマカの細胞膜では、ホスファチジルエタノールアミン(PE)が主要なリン脂質であり、形質膜を構築する脂質二重層の外層と内層で対称的に分布することが明らかとなり、哺乳動物を含めた他の真核生物と異なる特異な膜を有することが示された。そこで、細胞膜におけるリン脂質分布を制御する分子群について解析を進めた結果、哺乳類ではアポトーシス時のみ活性化するリン脂質スクランブラーゼXKRがショウジョウバエでは恒常的に活性化状態であり、リン脂質を常に形質膜の外層と内層間の双方向へ輸送していることを見いだした。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いてXKRを欠損させたショウジョウバエ細胞を作製した結果、XKR欠損株では膜張力が4.1倍に増加しており、ずり応力を与えた時の耐性が顕著に減少することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエおよびヒトスジシマカの細胞膜に着目して解析を進めた結果、これら小型昆虫の細胞は非常に高い変形能と外力に対する耐性を有しており、その要因としてリン脂質スクランブラーゼXKRが恒常的に活性化しており、細胞骨格非依存的に形質膜の変形能を向上させていることを明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
1. リン脂質スクランブラーゼXKRが、如何に細胞の変形能や力学的特性を制御しているのか、その分子機序を明らかにする。 2. マイクロ流路を用いることにより変形能に応じた細胞の分画・分取法を確立し、さらにCRISPR/Cas9システムによるゲノムワイドな遺伝子編集技術を駆使することにより、細胞の変形能を制御する分子群を網羅的に同定する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた細胞分画用のマイクロ流路の設計に遅れを生じ、マイクロ流路を用いた実験を次年度に繰越すこととなった。予算は、マイクロ流路の作製と細胞分画のための機器の購入に使用する。
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