2019 Fiscal Year Research-status Report
オーキシン不均等勾配非依存的な光屈性誘導機構の分子遺伝学的解析
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18K19329
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
酒井 達也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10360554)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 光環境応答 / フォトトロピン / 光屈性 / オーキシン / 突然変異体 |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物の光屈性は器官の光照射側と陰側の光刺激の差を植物ホルモン・オーキシンの濃度勾配に変換 し、光照射側と陰側の細胞伸長差を誘導する反応と考えられているが、実際には未だその詳細な理解は得られていない。我々はオーキシン不均等勾配形成に依存しない未知の偏差成長機構を解明することを目的に本研究を行っている。オーキシン輸送体 PIN3 及び PIN7の二重変異体のエンハンサー突然変異体DP1、DP3、DP4の原因遺伝子 PP2C を特定し、2018年度、その機能解析を行った。その結果、PP2C は光屈性の赤色光照射による促進及びフック形成に働くことが示された。2019年度は、PP2C の相同遺伝子についても分子遺伝学的解析を進めた。その結果、両者の遺伝子は機能重複して働き、それらの遺伝子の二重変異体は胚軸のランダムな屈曲異常がさらに促進される表現型を示した。また発現解析をしたところ、PP2Cタンパク質の発現は光によって調節を受けないが、相同遺伝子がコードするタンパク質の発現は光によって調節を受ける可能性が示唆された。植物ホルモンの作用への関与を検討するため、オーキシンだけでなく、ジベレリン、アブシジン酸等に関与した薬剤の効き目を pp2c 突然変異体で観察したが、その関与は検出できなかった。根の光屈性はオーキシンに依存しないことが明らかになったが、根の光屈性が異常になった突然変異体の選抜はこれまで十分に行われておらず、新奇突然変異体の単離が可能である可能性があった。そこで2019年度には根の光屈性異常突然変異体の選抜を行い、複数の候補株を選抜した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PP2C の機能解析は未だ進んでいないが、一方で PP2C 相同遺伝子の解析は進んでいる。PP2C に相互作用を示すタンパク質の探索ではその候補は同定できなかった。またPP2Cはオーキシン分布調節に関与する可能性があったが、2019年度のオーキシン分布パターン調節ではその関与は認められなかった。そこでオーキシン感受性への関与を検討するため、遺伝子発現パターン調節の網羅的解析、またオーキシン濃度に依存せずにオーキシン感受性調節を行う Aux/IAA タンパク質との関係を解析する研究に着手している。また PP2C相同遺伝子も胚軸屈曲に関与すること、こちらのタンパク質は光によって発現調節を受けることから、光屈性の重要な調節因子である可能性が示唆された。現在これらの可能性の検討を進め、2020年度末から2021年度内にはそれまでの成果をまとめた研究発表を行う計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
PP2C 相同遺伝子がコードするタンパク質の抗体を作成し、野生型及び光受容体異常突然変異体でのタンパク質発現調節の有無、転写制御なのか転写後発現制御なのか、等について検討をすすめる予定である。またPP2C及びPP2Cホモログによる遺伝子発現調節の有無を、ゲノム支援プロジェクトのサポートのもと、RNAseq 法により解析を行う予定である。オーキシン関連の遺伝子発現制御に関与しつつも、オーキシンによる機能調節を受けない Aux/IAA タンパク質が我々が想定しているオーキシン不均等勾配非依存的な光屈性誘導機構に関与する可能性を検討するため、それらのタンパク質をコードする遺伝子が異常になった突然変異体を収集し光屈性の表現型を観察する。またそれらのタンパク質の発現やリン酸化修飾が光によって調節される可能性を、YFP融合タンパク質を発現した形質転換体を作成し、検討する予定である。オーキシンに依存しない根の光屈性誘導機構を解析するため、あらためて根の光屈性異常突然変異体を選抜したので、それらの新奇突然変異体候補株の解析を今年度すすめる。
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