2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K19342
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 寿朗 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90517096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北口 哲也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60432374)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | プログラムセルデス / 発現制御 / 幹細胞 / 増殖抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が死に至るメカニズムを解明するため、いつどこで老化が始まり、シグナル因子が誘導され、死に至るのかを可視化する系を確立すること、そしてその分子メカニズムを解明することが本研究の主目的である。今年度は、茎頂、花びら、蜜腺と3つの器官に着目して、複数のプログラム細胞死の鍵となるレポーターを構築し、その発現を解析した。その結果、実際に、茎頂のリブメリステム、成長の止まった花弁、受精後の蜜腺において、細胞死関連遺伝子が誘導されていることを見いだした。同時に細胞死を誘導する未知の老化・死の誘導シグナル因子を目的としてRNA-seq解析を行った。その結果、器官によって、プログラム細胞死の他、オードファジー関連遺伝子が誘導されていることを見いだした。これにより、生殖過程において老化と細胞死を積極的に活用することによって、植物の一生が制御されていることが明らかとなった。今後、継続的に細胞死につながる遺伝子発現ネットワークの解明を目差す。また、花幹細胞の増殖抑制による死の制御としては、転写因子であるSUPおよびCRCの作用機序の論文をそれぞれEMBO Journal(2018)、 Nature Communications (2018)にて発表した。さらに花幹細胞の増殖抑制機構についてのレビュー(Xu et al., J of Experimental Botany 2019)に発表した。また、細胞自立的に花幹細胞の増殖抑制にかかわる経路の解析を行い、エピジェネティック制御を介した遺伝子ネットワーク機構を解明して論文報告を行った(Sun et al. Plant Cell 2019 in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、実際に花びら、蜜腺および茎頂において、老化に伴うプログラム細胞死が実際に起きていることを遺伝子発現のレベルで確認することができ、これら3つの器官が植物の老化と細胞死の非常に良い実験系であることを証明した。さらに花幹細胞制御におけるKNUとWUSとの関連性については、植物系トップジャーナルであるThe Plant Cell (2019)にて報告した。また、CRCおよびSUPによるエピジェネティック制御を介した花幹細胞の増殖抑制機構は、それぞれNature Communications (2018)およびEMBO Journal(2018)において報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
花びら、蜜腺、茎頂におけるRNA-seqによる発現プロファイル解析を詳細に解析することにより、細胞死およびオートファジーの誘導につながる遺伝子ネットワークの解明をすすめる。萌芽研究として、これまでの増殖と分化のバランスに基づく発生研究に老化の制御が重要であるという新たな概念の提唱と、研究分野の確立をめざす。
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Causes of Carryover |
分子遺伝学的解析、顕微鏡観察に必要とされる試薬や消耗器具の一部分を、新規購入することなく既存のストックでまかなうことができたため、計画より少ない支出で結果が得られた。その分支出が予定より少なくなった。 本年度に計画している花びら、蜜腺および茎頂において、発現の誘導される老化に伴うプログラム細胞死関連遺伝子の機能解析について、遺伝子組換え体の作成および、さらに遺伝子発現制御の解析を進める。網羅的な遺伝子発現制御、特にエピジェネティックと植物ホルモンシグナルの二面に着目しての解析には、多くの試薬購入を必要とする。特に、ChIP-seqアッセイでは、キットや抗体の購入が必要である。次年度使用額は、その実験に関する試薬購入や論文作成の費用などにあてることで、全体の計画を当初の予定通りに遅滞なく進ませる。
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Remarks |
新聞記事など 1.伊藤寿朗、日本経済新聞「花がめしべづくりを開始するためのDNAの折りたたみ構造変化を解明」奈良先端科学技術大学院大学 2018年12月12日 アウトリーチ活動など 1.奈良先端大サイエンス塾 花のABCモデルを平易に解説した。2018年10月13日 2.奈良先端大オープンキャンパス 植物の花の形作りについて。2018年11月11日
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Research Products
(20 results)