2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K19348
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岡野 俊行 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40272471)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 生物時計 / 概月時計 / 光受容 / 月光応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請書に記載の研究計画に基づき下記の研究を行った。 【1】実験室内での月光環境の再現:本研究の準備段階において、多数のLEDを組み合わせた人工月光装置を考案・作成していた。これをさらに大型にし、多数の細胞あるいは魚個体に与えられる装置を複数完成した。また、人工月光装置をPCより制御し、1ヶ月以上にわたって光強度を実際の月齢変動応じて再現できるようにした。 【2】Fugu Eye細胞を用いた月光応答性および概月時計機能の検証:上で作成した人工月光装置のもとでFugu Eye細胞を培養し、光に応じて遺伝子発現がどのような影響をうけるのかを調べた。その結果、DNA修復経路に関わる遺伝子の発現が月光によって有意に上昇することがわかった。概月時計機能の有無を検証するためには、長期にわたって細胞を培養することが必要不可欠である。そこで、Fugu Eye細胞を2ヶ月間培養できる条件を検討・決定した。また、Fugu Eyeとの比較対象のため、さまざまな光条件のもとでの時計遺伝子発現の変化をzebrafishやドジョウといった月光応答性を持たない生物でも調べた。 【3】人工月光周期下におけるゴマアイゴ幼魚の月周期応答性の検証:人工月光装置のもとで、ゴマアイゴ幼魚の月周期応答性を検証するためには、リアルタイムで行動を測定する必要がある。そのための赤外線カメラおよび赤外線投光装置を作成した。そこで現在、得られた画像を行動データに変換するための専用のプログラムの開発を進めている。また、トラフグの幼魚が、ゴマアイゴの幼魚より安定的に入手できる可能性が高まったため、ゴマアイゴと並行してトラフグの幼魚の行動も合わせて測定を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究【1】に関しては、多数の細胞や魚に対して、同一の波長分布をもった微弱な光を均一に照射することが必要である。このためには、多数のLEDの光を混合し、インキュベータ内において一定強度に保つことが重要である。このために、狭い範囲で光を均一にするための工夫が必要であった。さらに、月光の強度を月齢および時刻(月の高度が変化するため)に応じて刻々と変化させる必要があり、PCから制御することとした。光量変化にともなってスペクトルが変化しないように回路を工夫するなど、細かな調整が必要であったが、概ね当初の予定を十分に満たす装置の作成が完了した。 研究【2】に関しては、研究【1】での装置作成の完成を待つことなく、一定光量の月光装置を用いて先に並行して実験を行った。その結果、月光応答遺伝子の候補を見つけることができ、現在、完成した装置を用いての測定を開始した。月齢応答を調べる実験は、細胞の準備を含めて数ヶ月を要するため、結果はまだ出ていないが、本研究の終了までには十分間に合う計画にて遂行中である。 研究【3】に関しては、ゴマアイゴの幼魚(約5cm)が入手できなかったため、より大きな個体(約15cm)を用いることとした。そのため、当初予定していた赤外線センサーを用いる計画を変更し、赤外線カメラを用いることとした。これにより、データ解析に手間はかかるものの、行動パターンの解析も可能となり、将来的に得られるデータが増大した。 以上を総合して、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はほぼ予定通りに進んでおり、当初の予定通り、以下の研究をおこなう。 研究【1】に関しては、すでにおおよその目的を完了した。研究【2】に関しては、Fugu Eye細胞に月光応答性があることも判明した。そこで今後は、完成した人工月光装置のもとで、実際の月齢に即したパターンで継続的に月光刺激を与えた際に、概日時計遺伝子および光応答遺伝子に月齢依存的な遺伝子変動が見られるかどうか、さらに、月齢刺激の後に月光刺激を与えなかった場合にも月齢依存的な変動が観察されるかどうかを調べ、Fugu Eye細胞に概月性があるかどうかを検討する。研究【3】に関しては、完成した赤外測定系を用いて、ゴマアイゴおよびフグ稚魚の行動を測定する。行動解析プログラムを完成し、測定で得られるデータを元に、行動パラメータを算出し、月光応答性について検証する。 以上の解析を通して、Fugu Eye細胞に概月リズムが存在し、概月時計のモデル細胞として利用可能かどうかを検証する。
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Causes of Carryover |
実験に必要な試薬類にかかる費用が予測よりも若干金額が少なかったため、次年度使用額が生じた。 この分は、フグ個体を用いる実験に追加でかかる費用に充当する。
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Research Products
(8 results)