2018 Fiscal Year Research-status Report
先天異常を引き起こす母体の加齢効果を小型魚類でモデル化する
Project/Area Number |
18K19351
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
鈴木 誠 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 助教 (10533193)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 初期発生 / ゼブラフィッシュ / 環境因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
母体の高齢化は繁殖の成功に影響するリスク因子の1つである。この原因は一般に卵母細胞における染色体異常によって説明されるが、母体の高齢化により発症率が変化する先天異常の中には染色体異常を伴わないケースが存在しており、年齢に依存した母個体の性質の変化が子の発生に与える影響は未同定の様式により決定されている可能性がある。本研究は新規モデルの開発を通して母体年齢の変化が子の発生に与える影響を細胞・分子レベルで理解することを目的としており、それを達成するために水棲脊椎動物を用いることとした。ゼブラフィッシュではこれまでに複数の変異体で初期発生の異常の程度が母体年齢に依存して変化することが報告されている。そこで本年度は同様の変異体を連続的に交配・解析し母体年齢の効果を体系的に解析できる基盤を整備することを計画し、研究代表者の所属機関の動物施設において飼育環境の整備を行い、また野生型系統として用いるTL系統の交配と飼育を開始した。次に母体年齢に伴った変化が予想される胚発生の制御機構を探索する目的で、初期発生の確立過程で機能する細胞内構造を解析するための手法の開発を行った。特に昆虫からヒトに至る動物の卵細胞に普遍的に存在し、卵細胞の生存や極性形成に必須である顆粒構造であるバルビアニ小体に着目した検討を行った。その結果、バルビアニ小体が豊富に含むミトコンドリア等の染色法を応用することにより、母体年齢に依存したバルビアニ小体の形態の変化を簡便に可視化することが可能になった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに本研究が着目する脊椎動物の初期発生に対する母体年齢の効果を解析するための基盤を整備できた。今後は野生型系統の連続的な交配を更に進めるとともに、変異体についても同様に収集と交配を進める必要がある。しかし研究代表者が翌年度に他の研究機関に異動することが決定したため、交配プログラムの進行について遅延が生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
新規の飼育設備を速やかに確立することにより交配プログラムの遅延解消を目指す。また本研究の目的達成には母体年齢に伴った胚発生の制御機構の変化の全体像を捉えることが重要であるため、ゲノムワイド遺伝子発現解析の実施を計画している。また他の水棲脊椎動物において母体年齢の変化が子の発生に影響を与える可能性を加えて検証したい。
|
Causes of Carryover |
交配プログラム実施のために計上した消耗品費が当初計画より軽微で済んだこと、実験補助員の採用が間に合わなかったことにより次年度使用額が生じた。今後の研究実施において必要となる飼育設備の整備と試薬類の購入に充てる計画である。
|