2020 Fiscal Year Research-status Report
先天異常を引き起こす母体の加齢効果を小型魚類でモデル化する
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18K19351
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 誠 広島大学, 両生類研究センター, 助教 (10533193)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 初期発生 / ゼブラフィッシュ / 環境因子 / 背腹軸 / バルビアニ小体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゼブラフィッシュを用いた新規モデルの開発を通して、母体年齢の変化が胚発生に与える影響を細胞・分子レベルで理解することを目的としている。またネッタイツメガエルを併せて解析に用いることで、水棲脊椎動物で保存された胚発生に対する母体年齢効果を検証することとした。本年度は、前年度に予備的データが得られたネッタイツメガエルを用いた解析を引き続き進めた。両生類研究センターでは20年以上にわたる兄妹交配により確立された野生型近交系が収集されており、その中には10歳以上の年齢でなお卵細胞の形成を行う個体が存在する。ネッタイツメガエルの性成熟は早い場合では生後6ヶ月程度で起きることから、この動物種を用いることで加齢に伴う卵の状態の変化を長期に渡って解析できる可能性が考えられた。 そこで、異なる年齢の雌個体の卵細胞を対象としたトランスクリプトーム解析を計画・実施することとした。4段階 (1, 3, 5, 10歳)の個体から卵巣を採取し、RNAlater中に保存した。保存した卵巣サンプルの一部からQIAGEN RNeasy MiniKitでトータルRNAを抽出し、更にIllumina TruSeq Stranded Total RNA LT Sample Prep Kitでライブラリーを調整し、illumina社シーケンサーで解析を行なった。得られた解析データのサイズは3.7-5.9 Gbに渡る。本データを詳しく解析することで、加齢に伴いネッタイツメガエル卵中の遺伝子発現動態が変化する過程を明らかにできると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により、当初の研究計画について変更を余儀なくされている。飼育設備の整備は完了したが現所属での長期間に渡る継続的な親魚の飼育は達成されておらず交配実験に遅延が生じている。一方でツメガエルリソースを用いた解析は予想外の進展を見せており、本研究の目的の達成への寄与が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
補助期間を再度延長して研究を実施することにより、当初の目的の達成を目指す。ゼブラフィッシュを用いた解析については主に他機関から胚サンプルを入手して行うことに変更し、当初の計画に加えてゲノムワイド遺伝子発現動態の取得を目指す。ツメガエルを用いた解析については取得済み遺伝子発現データの解析を行うとともに、候補遺伝子の発現動態と正常発生率の低下現象との関連性を検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画に遅れが生じたことから、主に人件費・謝金に次年度使用額が生じた。今後の研究実施で更に必要となる試薬類に加え、ゲノムワイド遺伝子発現プロファイル解析等の受託解析に充てる計画である。
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