2018 Fiscal Year Research-status Report
モデル線虫近縁種による大きな進化的変化機構の解明と進化実験モデル生物の確立
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18K19355
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河田 雅圭 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90204734)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 線虫 / 転移因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
C. elegansの姉妹種として発見された線虫C. inopinataは、C. elegansに比べて、生活環境や体サイズなど生態的・形態的に大きく異なっている。さらに、C.inopinataでは、挿入されている転移因子の数がC. elegansに比べて異なっていることが示されている。本研究では、C. inopinata系統で生じたトランスポゾンの挿入が、両種の体サイズや生活様式の大きな違いの進化にどう影響したのかを解明することを目的とした。まず、C. inopinataおよびC. elegansにおいて、遺伝子の上流2kbから下流2kbまでの領域に転移因子が挿入されている遺伝子を取得した。転移因子が挿入されている遺伝子について、RNA-seqで得られたL4幼虫期およびYoung Adult期での遺伝子発現量との関係を調べた。10151個の遺伝子がC.inopinata特異的に転移因子が挿入されていた。そのうち、L4幼虫期で599個、Young Adult期で6689個の遺伝子発現量が2種で異なっていた。C. inopinataおよびC.elegansのどちらの種であっても、転移因子の挿入がある遺伝子は、挿入のない遺伝子に対してC.inponataのC.elagansに対する壮大発現量が高かった。これらのことから、サイズの違いに影響すると考えられる時期の遺伝子発現量は、全体的にC.inopinataがC. elegansに比べて高いが、転移因子の挿入の効果はどちらの種に挿入されてもC.inopinataの相対発現量が上昇することがあきらかになった。C. elagansでの転移因子の挿入は、発現量を抑制している可能性が示唆された。また、新たに沖縄で採集したオオバイヌビアの中からC.inopinataを得て、ゲノム解読を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおり、C. inopinataおよびC. elegansにおいて、転移因子の挿入箇所を特定することができた。さらに、転移因子が挿入された遺伝子において、体のサイズに関わるステージでの遺伝子発現が2種でどう異なるかを全体的傾向として解明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は転移因子の挿入と遺伝子発現量変化の因果関係の確認を行うために、配列解読による調節領域場の転移因子挿入の確認、CAGE-seqによるプロモータとなっているTEの転移因子、候補遺伝子上の転移因子を遺伝子編集することによる遺伝子への影響の確認を実施していく予定である
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Causes of Carryover |
野外から採集したC.inopinataの個体が、実験室培地上での増加が悪く、一部しかゲノム解析に回すことができず、予定されていたゲノム解析費用を次年度に持ち越した
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Research Products
(1 results)