2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K19358
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浦山 俊一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50736220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊福 雅典 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30644827)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 共存型RNAウイルス / 糸状菌 / 真菌 / 伝播 / 細胞外膜小胞 / コミュニケーション / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、宿主生物と共存関係を構築した“共存型RNAウイルス”が、宿主生物のコミュニケーション機構の一つである細胞外膜小胞を利用して伝播している可能性を検証する。具体的には、共存型ウイルス研究が進んでいる真菌を対象とし、真菌由来の細胞外膜小胞の取得と共存するウイルス核酸を検出すること、実験的に共存型ウイルスが細胞外膜小胞を介して水平伝播可能であることの証明を目指す。 当初の計画では真菌としてパン酵母を中心に使用するとしていたが、検討の結果、パン酵母では十分量の細胞外膜小胞を取得することが困難であることが判明した。そこで、植物病原糸状菌を用い、本研究計画を遂行している。 本年度は、真菌から取得した細胞外膜小胞画分に、共存型RNAウイルスが存在することを初めて明らかにした。既に、バクテリアにおいては細胞外膜小胞を介したプラスミドの種内伝達などは報告されており、それに類似するものに共存型RNAウイルスが存在するという結果は、「宿主と“共生的”なウイルス伝播機構の解明」へ向けた大きな一歩と言える。 また、上記の達成には十分に精製した細胞外膜小胞画分を取得する必要があり、細胞外膜小胞の産生条件や時期を詳細に検討した。その結果、これまで糸状菌では報告のない新たな細胞外膜小胞画産生メカニズムの存在が示唆される結果を得た。さらに、糸状菌由来の細胞外膜小胞を高純度で多量に得られた事例はほとんどなく、当該試料は糸状菌における細胞外膜小胞産生メカニズムの解明にも資する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【真菌由来の細胞外膜小胞の取得と共存するウイルス核酸の検出】 当初、共存型ウイルスの存在と細胞外膜小胞産生条件が報告されていたパン酵母を用いて研究を進めたが、精度の高い解析に足る細胞外膜小胞を取得することが出来なかった。そこで、自身が過去の研究に用いていた共存型ウイルスが感染している糸状菌等を用いて検討を行い、特定の培地条件下で十分量の細胞外膜小胞が特徴的なパターンで産生されることを明らかにした。得られた細胞外膜小胞は密度勾配遠心によって精製した後、RNA-seq解析により共存型ウイルスが存在することを確認した。 【ウイルスゲノム含有細胞外膜小胞画分を用いた感染実験】 細胞外膜小胞によるウイルスの感染効率が不明なため、感染が起こった細胞を選択的に検出する必要があると考えた。そこで、実際のRNAウイルス感染実験に先立って、バクテリアと酵母の両方で複製可能なシャトルベクターを用いた疑似感染実験を試みている。 【環境中の細胞外膜小胞に含まれるRNAウイルスの網羅的検出】 湖水より細胞外膜小胞画分を濃縮・精製手法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、実験的に共存型ウイルスが細胞外膜小胞を介して水平伝播可能であること、野外環境中にRNAウイルスを含有している細胞外膜小胞が存在する可能性を検証する。 これまでに実施してきた模擬感染実験でシャトルベクターの伝播が確認できていないことから、前者の課題については困難が予想される。これまでの試験では実験室で培養した細胞に対する感染を試みてきたが、野外環境で想定される細胞壁の傷などを人工的につけるなど、感染効率が向上する可能性がある条件を検討する。当初計画ではパン酵母の共存型RNAウイルスを用いることで、当該ウイルスの特異な機能(キラー現象)を利用した感染株の選抜が可能であるとしていた。しかし、パン酵母が報告されていたほどの細胞外膜小胞を産生しなかったため、キラー現象を引き起こさないウイルスを用いた感染実験が必要となっている。 環境中の細胞外膜小胞を濃縮・精製する技術は確立しており、湖水を対象にRNA-seq解析を実施する。当初計画では海水を用いることを想定していたが、本研究で着目している真菌がより優占していると考えられる湖水試料を用いることで、より高感度に真菌RNAウイルスの存在を検知できると期待される。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として約6万円を計上した。これは、学会発表を行わなかったためと考えている。 研究は順調に推移しており、計上額も大きくないことから、翌年度の助成金と合わせ概ね計画通りに使用を進める。
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