2020 Fiscal Year Annual Research Report
Embryology and unique reproductive strategy on a worldwide distributed mayfly, Cloeon dipterum: Proposal for a new type of insect viviparity
Project/Area Number |
18K19361
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
東城 幸治 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (30377618)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 昆虫 / 胚発生 / 胎生 / カゲロウ / 適応放散 / 卵黄タンパク質 / 栄養供給 / 栄養の再吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫類の発生様式においても極めて特殊であるフタバカゲロウ(カゲロウ目, コカゲロウ科)の東アジア地域系統の胚発生が、従来から知られてきたような「卵胎生」タイプではなく、むしろ「胎生」タイプであることが強く示唆される知見を得た。 卵形成時に、卵内にはタンパク質性の卵黄物質が蓄積されず、卵形成時の卵内に多く観察される脂質(脂質を特異的に染色する試薬・ナイルレッドでの好染)を消費しながら初期発生が進行することが明らかとなった。胚発生にタンパク質性の物質は不可欠であることから、卵形成の段階ではなく、その後の胚発生段階において母体から卵内へと供給されている可能性が強く示唆された。このような母体から胚への栄養供給は、もはや「卵胎生」の範疇を超えるものである。 このような展開から、本研究では、透過型電子顕微鏡による観察を新規に導入した。この結果、卵巣構造のすぐ外側に卵巣を取り巻く特殊な膜状の構造が観察され、この膜状構造内には電子密度が極めて高い物質(タンパク質性の物質と考えられる)が観察された。さらに、胚発生の経過とともに、この高電子密度の物質は、卵巣内に取り込まれ、卵巣上皮細胞を経由したのちに、胚へと移ることも観察された。つまり、母体から胚への栄養供給が観察され、これらの物質のやりとりには不可欠である、ゴルジ装置や膜部分には微絨毛状の構造が形成されることも明らかとなった。 加えて、(おそらくは受精時の問題から)胚発生が進行しない卵については、未発生の卵自体が消失する(栄養物質が母体に再吸収される)ような特殊性も明らかとなり、この内容について、Yano and Tojo (2021) として Zool Sci 誌に論文公表を行った。 また、先述のように卵黄タンパク質の母体から胚への供給が示唆されたが、このタイミングで卵黄タンパク前駆物質の発現に関わるビテロジェニンの活性化を確認することができた。
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