2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of innovative embryo manipulation system for genetically modified marmoset
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18K19375
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
笹岡 俊邦 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50222005)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | マーモセット / 卵巣 / 免疫不全マウス / 異種間移植 / 体外受精 / 胚操作 / 胚盤胞補間法 / ドーパミン受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年ゲノム編集技術の発展により比較的容易に遺伝子改変が様々な動物で行えるようになってきた。しかし、実際に遺伝子改変モデルマーモセットを作出するためには多くの受精卵の獲得が必須である。また、体外受精のため、精子の保存法の確立も望まれている。そこで私たちは、霊長研の中村克樹教授から分与して頂いた、安楽死されたマーモセットの卵巣および精巣上体をもちいてマーモセット卵子および受精卵を効率的に作出することと精子の凍結保存法の確立を行った。 <方法>以下の実験は、主に京大霊長研の中村克樹教授より提供された試料を用いた。マーモセット卵巣の異種間移植(1)マーモセット卵巣を細切した。移植しない場合は液体窒素にて凍結保存した。(2)免疫不全マウスの卵巣を切除後、左右の腎被膜下に卵巣片を移植した。凍結保存した卵巣は融解後に使用した。(3)移植から10日以降、卵胞刺激ホルモン(FSH)を9日間毎日または2日毎に投与した。(4)FSHの投与開始から9日後に左右腎臓を採材した。(5)卵巣から採卵できた卵子を26時間培養した。(6)培養後MⅡ期となった卵子を顕微授精した。 卵黄糖液による精子の凍結保存(1)輸送後の精巣上体尾部を卵黄糖液内にて細切した。(2)精子懸濁液を作製し、室温から4℃まで2時間かけて冷却した。(3)精子懸濁液と同量の耐凍剤入り保存液を添加した。(4)プラスチックストローに封入後、液体窒素液面上に静置し凍結した。 <結果>冷蔵輸送後および凍結融解後のマーモセット卵巣は腎被膜下に生着し、GV期の卵子を得ることが出来た。GV期の卵子は成熟培養後、MⅡ期に進み、顕微授精後、前核期受精卵まで発生させることが出来た。 冷蔵輸送後の精巣上体尾部より運動性を有する精子を回収することができ、それら精子の凍結保存を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果は、これまで未利用であったマーモセット卵巣をヌードマウスに移植し、ホルモン投与によりその体内で卵子が成熟し、採取できることの発見である。この卵子は人工授精により受精卵が得られることを確認している。移植した卵巣からの成熟卵の取得方法に関する先行研究はなく、マーモセット新生児卵巣にはヒトに比べ、未熟な卵原細胞が多数存在するという報告や(Fereydouni et al. Reproduction 2014)、ヌードマウスに移植したマーモセット卵巣の成熟卵胞の成長・卵胞プールの維持についてSonntagらの報告(Fertil Steril 2011他)がある。また、広島大学の外丸らは、卵巣刺激法及び未成熟卵子の体外成熟法を検討しているが、マーモセットの未成熟卵子ホルモン誘発による過排卵の方法は確立されていない。したがってこの手法を精緻化し、大量の成熟卵子や受精卵を安定的に生産する手法が確立できれば、経費と動物福祉の問題を避けて、成熟卵子や受精卵を供給する道が拓ける。 これまでに京大霊長研の中村克樹教授をはじめとして複数施設から提供された卵巣を用いて、新潟大学脳研究所までの試料の冷蔵輸送の方法、ヌードマウスへの移植の方法、卵胞刺激ホルモン(FSH)の投与プロトコール、移植した卵巣からの卵子採取の方法、体外受精の方法について種々の条件を検討して、良好な成績を示す方法が明らかになってきた。併せて、オスのマーモセットの精巣上体尾部の試料取得後の冷蔵輸送の方法、精巣上体尾部から運動性を有する精子の採取の方法、精子の凍結保存の方法などの条件検討を行い、同様に良好な成績を示す方法が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
第1は、飼育中の死亡個体や実験目的で安楽死させた個体の卵巣を免疫不全マウスに移植し、マウス体内でホルモン投与により成熟させた卵子を体外受精させ、受精卵として利用する手法の確立である。併せて、この方法により野生型および遺伝子改変マーモセット卵巣より、卵子を採取し受精卵を得て、効率的に個体を作出する方法としても確立する。 第2は、取得した受精卵に遺伝子編集法で変異導入後に仮親に移植し、脳高次機能解析に利用可能な疾患モデルマーモセット個体を作出する。この過程で胚操作に熟達した人材育成にも努める。 第3は、胚盤胞補完法による遺伝子改変マーモセット精子取得法の確立である。現在、進展している遺伝子編集技術であるが、長鎖のDNA断片挿入などの複雑な遺伝子改変の効率は低く、産子の少ない動物胚に適用するのは現実的ではない。この問題を解決するため、複雑な遺伝子改変はES/iPS細胞でおこない、これら細胞を精巣形成不全かつ免疫不全のマウス胚に移植し、胚盤胞補完法により当該細胞由来の精子を得る。この精子を用いれば、顕微授精法により少数の未受精卵から産子の取得が可能になる。 これまで作製されてきた遺伝子改変マーモセットは、トランスジェニック法や遺伝子編集法によりなされてきたが、これらの技術はいずれも多数の胚を必要とし、その取得に経済的にも倫理的にも問題があった。安楽死動物からの卵巣を用いた本技術が実現できれば、倫理的な問題を避け、経済的に多数の受精卵が確保できる道が拓ける。さらに、胚盤胞補完法を用いた遺伝子改変生殖細胞の確保は、遺伝子改変マーモセット作製の大きなブレークスルーになる。本研究課題により、確実かつ低コストで遺伝子改変マーモセットを作出できるように努め、多様な発想で研究する多くの研究者へリソースとして供与して研究発展に大きく寄与したい。
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Causes of Carryover |
今後の研究の推進の方策として、3つの課題、すなわち(1)マーモセット成熟卵子・受精卵の安定的生産方法の開発,(2)異種間移植卵子を用いた脳疾患モデルの作製,(3)胚盤胞補完法による遺伝子改変マーモセット精子取得法の確立の研究を予定している。これらの方策を有効に進めるために、研究経費として、本次年度使用額と翌年度分として請求した助成金と合わせて執行したい。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 異種間移植マーモセット卵巣由来卵子を用いた受精卵の効率的作出法の検討2018
Author(s)
宮本純,中務 胞,前田宜俊,三輪美樹,小田佳奈子,藤澤信義,夏目里恵,田中 稔,山本美丘,阿部光寿,崎村建司,中村克樹,笹岡俊邦
Organizer
第48回新潟神経学夏期セミナー
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