2018 Fiscal Year Research-status Report
光による核内シグナル制御法の開発と記憶を人為的に書き込む操作への応用
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18K19377
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
実吉 岳郎 京都大学, 医学研究科, 准教授 (00556201)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | CREB / CaMKIV / 光制御 / 学習 / 行動 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
光は幅広く生物学的な実験に広く使われている。特に神経科学領域では光により神経活動を制御する光遺伝学という学術分野になっている。光の特性を考えるに、光による細胞の制御の応用は広い。しかし光を使って遺伝子発現を制御する技術は未だ不十分である。もし光依存的な遺伝子発現制御が可能となれば、様々な応用が考えられるが、汎用性のある方法は未だ見当たらない。そこで本研究では、光依存的な遺伝子発現制御法の技術開発を行う。 光遺伝学の成果の一つに光刺激によって記憶を呼び起こせるようになったことが挙げられる。ところが、記憶を書き込む方法論はまだ存在しない。これにあたり2つのヒントとなる報告がある:(1)活性化型の転写因子CREBやその上流キナーゼCaMKIVを過剰発現させるとシナプス機能が亢進すること、(2)CREB を強制発現させた神経細胞に記憶が書き込まれることである。これらの結果を合わせると、動物個体の学習時に任意の神経細胞でCREBを活性化させれば、その記憶は任意の細胞に書き込まれ、その細胞を活性化させれば記憶を呼び起こすことができるはずである。そこで本研究では光による人為的な記憶の書き込みと読み込みを可能にする方法論の確立を目的とする。このアイディアを実現するために次の研究計画に従って研究を進める。研究計画1 光活性化核内移行シグナルモジュールの作成 遺伝子発現調節が核で起こる事を利用して、まず、共通部分として光活性化核移行シグナル(PA-NLS)の作製に成功した。研究計画2 光活性化核機能タンパク質の作成と機能解析 光活性化CREBは、高い発現量だと転写活性が強く影響を受けることがわかった。研究計画3 光活性化核機能タンパク質の神経細胞での利用 まだ試せていない。研究計画4 光活性化型CREBによる記憶の書き込みと呼び出し ウイルス発現系の構築を行い、ウイルスの産生まで確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画1 光活性化核内移行シグナルモジュールの作成 遺伝子発現調節が核で起こる事を利用して、まず、共通部分として光活性化核移行シグナル(PA-NLS)を作製する。PA-NLSの作製は成功した。CREBを連結させても、核移行や細胞質とのシャトリング出来ることを確認できた。 研究計画2 光活性化核機能タンパク質の作成と機能解析 我々は既にPA-NLSを得ているため、転写因子CREBだけでなく、その他の転写因子、CREBを活性化するキナーゼであるCaMKIVやCreリコンビナーゼなどの様々な核タンパク質でも機能する筈である。そのため、これらのタンパク質とPA-NLSとの融合タンパク質を作成する。その上で、それぞれのタンパク質の機能を解析していく。転写因子CREBについては、細胞質と核との間のシャトリングは光依存的に行える事を確認んした。転写活性がベーサルに高い問題があり、発現量や細胞膜やゴルジ体からの放出などを試みたが、発現量を抑えるのが良いと思われた。 研究計画3 光活性化核機能タンパク質の神経細胞での利用 作成された光活性化核機能タンパク質が神経細胞で実際に機能するかをテストする。この目的のために、光活性化タンパク質が海馬神経細胞でシナプス可塑性の一つである長期増強現象(LTP)を増強し得るか試験する。これは来年度に行う。 研究計画4 光活性化型CREBによる記憶の書き込みと呼び出し 光活性化型CREB(PA-CREB)による記憶の書き込み、想起の制御を試みる。恐怖文脈条件付けによる学習記憶がPA-CREBを発現する神経細胞への光刺激依存的に書き込まれ、同時に発現させたチャネルロドプシンの光による活性化で、記憶を想起するか行動変化によって検討する。ウイルスベクターの作製と発現誘導法のを行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画1 光活性化核内移行シグナルモジュールの作成 これは終了した。 研究計画2 光活性化核機能タンパク質の作成と機能解析 我々は既にPA-NLSを得ているため、転写因子CREBだけでなく、その他の転写因子、CREBを活性化するキナーゼであるCaMKIVやCreリコンビナーゼなどの様々な核タンパク質でも機能する筈である。そのため、これらのタンパク質とPA-NLSとの融合タンパク質を作成する。その上で、それぞれのタンパク質の機能を解析していく。CREBについては発現量の調節で行うこととし、CaMKIVも細胞質での余計な活性化が問題となっているので、改良を加える。 研究計画3 光活性化核機能タンパク質の神経細胞での利用 作成された光活性化核機能タンパク質が神経細胞で実際に機能するかをテストする。この目的のために、光活性化タンパク質が海馬神経細胞でシナプス可塑性の一つである長期増強現象(LTP)を増強し得るか試験する。これは来年度に行う。 研究計画4 光活性化型CREBによる記憶の書き込みと呼び出し 光活性化型CREB(PA-CREB)による記憶の書き込み、想起の制御を試みる。恐怖文脈条件付けによる学習記憶がPA-CREBを発現する神経細胞への光刺激依存的に書き込まれ、同時に発現させたチャネルロドプシンの光による活性化で、記憶を想起するか行動変化によって検討する。ウイルスベクターの作製と発現誘導法の検討を行なっている。
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