2018 Fiscal Year Research-status Report
Subtype conversion of mature neurons in cerebral cortex
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18K19378
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲嶋 一範 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90280734)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 神経細胞 / 分化 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の中には多くのサブタイプの神経細胞があり、それぞれ特有の線維連絡をしている。それらは、神経前駆細胞が次第にその分化能を変化させ産生されると考えられてきた。しかしながら我々は最近、少なくともある種の細胞については神経細胞として生まれて未熟な時期にはまだ特異化されておらず、その神経細胞が最終的に配置された場所の細胞外環境の影響によってサブタイプが変わりうることを発見した。そこで本研究では、生体内で成熟神経細胞を分化転換させ、サブタイプを人為的に変換させることを目的に研究を行った。 深層神経細胞の運命決定を制御する転写因子Fezf2を浅層神経細胞で強制発現させると、浅層型のサブタイプから深層型のサブタイプの神経細胞へと分化転換することが報告された。しかしながら、この分化転換が起こるのは出生直後までに限られ、成熟神経細胞は分化転換しない。そこで本研究では、この分化転換抵抗機構を人為的に解除した上で分化転換を誘導することを試みた。すなわち、分化転換抵抗機構としてクロマチン制御因子による制御を想定し、候補分子の発現を人為的に抑制した上でFezf2の強制発現を行った。その結果、成熟浅層神経細胞で単にFezf2の発現を誘導してもその下流因子の発現は誘導されないのに対し、クロマチン制御因子の発現を抑制した状態ではいくつかの下流因子が誘導されることを見出した。しかしながら、この条件においてもサブタイプを特徴づけるのに非常に重要である線維連絡については変化が起こらなかった。 一方、Fezf2による分化転換が可能である未成熟神経細胞の系を用いて、Fezf2の機能を強化する分子の探索も行った。その結果、深層神経細胞に発現するいくつかの因子がFezf2の分化転換効果を著しく促進することを見出した。今後、これらの因子を同時に強制発現させることで、成熟神経細胞でのサブタイプ転換を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成熟神経細胞のサブタイプ変換に関しては、部分的ではあるものの、サブタイプの特徴を変化させることに成功した。また、未成熟神経細胞の系を用いた解析から、分化転換を著しく促進する因子を見出した。今後、これらを利用することで成熟神経細胞での分化転換が可能になると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
転写因子Satb2は浅層神経細胞の分化決定因子であり、その遺伝子破壊は本来浅層細胞になるべき細胞を深層細胞様へと分化させることが報告されている。本研究において未成熟神経細胞の系で解析を行ったところ、Satb2の遺伝子発現の抑制がFezf2による分化転換を著しく促進することを見出した。従って、成熟神経細胞においてSatb2がFezf2に対して強力に拮抗することで浅層神経細胞としての性質を守っている可能性が示唆された。今後の研究では、Satb2の発現を人為的に抑制した上でFezf2を強制発現させ、分化転換について評価を行う。 また、in vitroの系において、分化した線維芽細胞やアストロサイトを神経細胞に直接分化転換させることのできる因子として転写因子Neurog1/2やAscl1が報告されている。これらは発生期において前駆細胞や幼若神経細胞で発現しているため、細胞の転写状態を幼若な環境にすることが分化転換のキーとなる可能性が考えられる。今後の研究では、これらの前駆細胞型の転写因子を、Fezf2などのサブタイプ決定因子と共に成熟神経細胞で発現誘導することにより、成熟神経細胞を分化転換できるか検討する。
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Causes of Carryover |
年度途中にマウス飼育室において感染事故が発生し、一時的にマウスを使った実験を中断せざるを得なくなった。そのため、生きたマウスを用いる一部の実験を次年度に実施することとなった。
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Research Products
(6 results)