2018 Fiscal Year Research-status Report
遷移状態の制御を基盤とした新規ホウ素化反応の開発と医薬品・機能性分子創製への展開
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18K19390
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 圭一 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (40633392)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | ホウ素 / π共役系 / アルキン / カルボホウ素化 / ジボリル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウ素ールイス塩基複合体を活性種とする含ホウ素機能性材料の開発において、以下の成果を上げた。 1)アルキニルアミドのアルキニルホウ素化反応:BuLi により発生させた2級のアルキニルアミドとアルキニルボロン酸エステルからボラートを形成し、これを加熱することでアルキニルアミドのカルボニル基の α 位にアルキン、β 位にホウ素が一挙に、トランス選択的に導入される反応を開発した。これは一般的な α,β-不飽和カルボニル化合物への求核付加反応とは逆の極性で進行する興味深い位置選択性を示しただけではなく、極めて多彩なアミド基質を用いることができるなど高い官能基許容性を有していることも明らかとなった。また生成物はスチルベン骨格を有しており、ホウ素に架橋されることでトランス型構造が剛直に固定され、固体状態で高い量子収率をもって蛍光発光を示すことがわかった。発光波長はアルキニルアミドの置換基に依存するため、上記の広い基質一般性からも「極めてモジュラーな新規蛍光色素」を創製することができたといえる。 2)ジボロン試薬のカルバニオンによる活性化に基づく含ホウ素芳香環の合成:アルコキシドによるジボロン試薬の活性化はボリルアニオン等価体の化学においての常套手段であるが、より強力なアニオンを用いたジボロンの活性化・ホウ素化反応例は限られている。我々は、超強塩基である sp2 カルバニオンを用いてジボロンを強力に活性化することで、極低温であってもアルキンのジボリル化反応が進行することを見出した。本現象をホウ素を含む多環式芳香族化合物の合成に展開し、現在その適用範囲と生成物の物性を調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記1)に関しては、極めて迅速に反応の特性、適用範囲の調査を完了することができた。また、理論計算化学による化合物の光特性の解明、X 線結晶構造解析によるパッキング状態の解析から AIEE 性の起源を考察できた。また、生成物を化学リゲーション反応により糖誘導体と結合できることも明らかになり、この新たな蛍光色素がバイオイメージングなどの用途に用いることができる可能性を示した。本成果は、本年の Organic Letters 誌に採択された。 上記2)に関しても既に反応条件の最適化を完了し、順調に適用範囲の検討を遂行中である。また、理論計算化学による反応メカニズムの解析も並行して行なっている。今後は生成物である含ホウ素芳香族化合物の物性調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記2の成果に関して、様々なホウ素含有芳香環の合成が可能であることがわかりつつあるため、引き続き適用範囲を調査する予定である。また、生成物は可視領域に強い蛍光を発する化合物群であるため、それら新しい化合物の発光特性や安定性、化学変換などを精査する予定である。具体的には、熱活性化遅延蛍光や円偏光発光性などを調べ、実用化に向けたさらなる分子デザインと合成を行なっていく。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた書籍の必要がなくなったために当該助成金が生じました。本資金を用いて、今年度は岡山で開催される第 45 回反応と合成の進歩シンポジウムへの参加を計画しています。
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Research Products
(8 results)