2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム変異集積領域に着目したがん特異的タンパク質間相互作用解析
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18K19403
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
樋野 展正 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (90469916)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | がんゲノム / タンパク質間相互作用 / クロスリンク / 人工アミノ酸 / プロテオミクス / KEAP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際的がんゲノム解析プロジェクトの成果として,がん種ごとの特徴的な遺伝子変異パターンが見出され,がん患者のカテゴライズやテーラーメイド医療へと応用されている.しかしながら,これまでのがんゲノム創薬研究は既知のがん関連遺伝子に高頻度に生じる変異をターゲットにしたものがほとんどであり,新規創薬標的の枯渇が問題視されている現状を鑑みると,その研究の方向性を大きくシフトする必要があると考えられる.本研究では,がんゲノム情報とタンパク質立体構造情報を組み合わせることにより,変異が集中して見つかる特定のタンパク質領域を「変異集積領域」として特定する.さらに,その領域を介して生じる相互作用を「細胞内光クロスリンク法」という独自手法を用いて集中的に解析する.これにより,これまで研究対象とならなかった中ー低頻度の変異情報からがん細胞で異常をきたすタンパク質間相互作用を効率よく見出すためのスキームを確立する. 我々は,多くの肺腺がん,非小細胞性肺がんにおいて変異が見られるKEAP1遺伝子に着目し,そのタンパク質表面上の変異が集積する領域を特定することに成功した.そこで,この領域を介して相互作用する因子を独自の細胞内光クロスリンク法を用いて同定することを試みた.この手法は,細胞内に光クロスリンカーとして機能する人工アミノ酸を部位特異的に組み込んだ任意のタンパク質を発現させておき,細胞への光照射によって,そのタンパク質と細胞内でダイレクトに結合する因子を捕捉・同定する手法である.これにより,KEAP1の新規相互作用因子として複数のGTPaseを同定することに成功した.現在, KEAP1とGTPaseの機能的関連性について解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同定されたGTPaseのひとつであるRab8aとKEAP1の機能的関連性について解析を進めた結果,両者が細胞内で共局在すること,また,Rab8aの機能亢進による細胞浸潤能の上昇がKEAP1により抑制される可能性を見出した.さらに,がんゲノムデータベースから抽出した比較的高頻度に見られる点変異をKEAP1に導入し,Rab8aとの相互作用の変化が見られるかどうかを解析したところ,その相互作用に影響が見られる変異部位を複数同定することに成功した.これらのことから,当初の計画をおおむね順調に遂行できている.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,KEAP1がRab8aの機能を抑制する分子メカニズムの解明を目指す.次いで,がん変異がKEAP1-Rab8a間の相互作用に及ぼす影響を詳細に解析し,この相互作用の変化がRab8aの機能ひいてはがん細胞の増殖能,遊走能,浸潤能といった基本的形質変化に及ぼす影響について解析する.これらの解析により,変異集積領域に着目した相互作用解析からがんの生育に影響を及ぼす新規タンパク質間ネットワークを見出すというスキームの有効性について検証する.
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Causes of Carryover |
当初、光架橋性人工アミノ酸合成委託費としてその他経費に1,000千円を計上していたが、原料の調達ができず、合成できなかった。この計画は次年度に実行予定である。
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Research Products
(4 results)