2018 Fiscal Year Research-status Report
A novel method of dispersion and agglomeration of nano-drug and its application to dry powder inhalation
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18K19409
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
綿野 哲 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40240535)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ薬物 / 粉末吸入製剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
粉末吸入製剤は喘息治療のみならず、インフルエンザ治療薬のように全身治療の投与経路としても注目されている。本法では、吸入デバイスへの充填時に良好な流動性が求められる反面、吸入時には肺到達を実現する0.5から7ミクロン程度の微細な粒子への再分散性という、相反する特性が要求される。これまで、キャリア法・造粒法など様々な手法が試みられているが、両者を満足する理想的な調製手法は確立されていない。本研究課題では、新規な超臨界凍結造粒法を用いて、超臨界二酸化炭素雰囲気下における粒子の粉砕・分散・凝集のメカニズムを明らかにするととともに、吸入効率に優れた粉末吸入製剤の開発を実施した。 平成30年度は、超臨界二酸化炭素雰囲気下による粉砕と分散に関するメカニズムの解析に主眼を置いた研究を実施した。具体的には、ジルコニア製のリング媒体が6本のロッドに装着され、それらが高速で回転する新規なリング媒体式粉砕装置を試作し、操作条件(回転速度、運転時間、超臨界の温度・圧力条件など)が粉砕物あるいは晶析物の物性(粒子径、結晶径、溶解度)に及ぼす影響を調べた。さらに、超臨界流体の密度変化が薬物の粉砕および分散に及ぼす影響を詳細に解析した。 さらに、超臨界二酸化炭素中で、薬物がどのようなメカニズムで粉砕されるかを理論的に解析するため、粒子離散要素法(DEM:Discrete Element Method)と計算動力学(CFD: Computational Fluid Dynamics) を用いて、粉体リングの動きを可視化するとともに、粉砕リングが容器壁面付近で薬物粒子とどのような衝突をしているかを詳細に解析した。その結果、薬物粒子は、リングから衝突よりもむしろせん断作用を受けて粉砕されることが明らかになった。これにより、粉砕効率をさらに向上させる知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、超臨界二酸化炭素による粉砕と分散に関するメカニズムの解析に主眼を置いた研究を実施した。特に超臨界二酸化炭雰囲気下で運転可能なリング媒体式粉砕装置を試作するとともに、それを用いた実験により、操作条件(回転速度、運転時間、超臨界に二酸化炭素の温度・圧力条件など)が粉砕物あるいは晶析物の物性(粒子径、結晶径、溶解度)に及ぼす影響を明らかにしたことは、今後の研究開発に大きく寄与できるものと推察される。 さらに、当初予定していた研究に加え、数値シミュレーションを導入し、装置内における超臨界二酸化炭素および薬物の運動挙動、さらに、粉砕のメカニズムを明らかにできたことは、今後の実用化に向けて大きな進展となる。さらに、本知見により、粉砕効率をさらに向上させる知見が得られたことは、超臨界流体の利用範囲を大きく進展させることに役立つと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、平成30年度の得られた知見を基に、リング媒体式粉砕装置を改良し、さらなる薬物の粉砕・分散性能の向上を検討する。次に、本プロセスを実際の粉末吸入製剤の調製プロセスへ応用する。超臨界二酸化炭素に溶解する薬物として、実際の粉末吸入製剤に使用される薬物(テオフィリン)を使用するとともにし、溶解しない薬物としてクロモグリク酸を用いる。ナノ薬物の凝集体を生成させ、ガス吸着法により凝集体の細孔径および細孔分布を調べるとともに、ナノ粒子の生成と凝集メカニズムを明らかにする。さらに、凝集体の機械的強度に加え、流動性、付着力、さらに、粉末吸入製剤の分野で多用されるカスケードインパクターを用いて凝集体の再分散性を評価する。操作条件(特に、ドライアイス径とドライアイスの生成速度など)とナノ薬物凝集体構造およびその物性の関係を用いて、吸入特性との関連付けを行う。さらに、粒子離散要素法と数値動力学を用いた数値計算により、コンピュータで実際の付着性を考慮した数値計算モデルを作成し、我々が作成した人体3次元肺モデルの中でどのように分散するかを科学的に解明する。
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Research Products
(1 results)