2018 Fiscal Year Research-status Report
製剤条件でバイオ医薬の立体構造を非侵襲的に評価する新規NMR技術の開発
Project/Area Number |
18K19415
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹内 恒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究チーム長 (20581284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 裕二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (80713354)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | バイオ医薬品 / 製剤条件 / 非侵襲的 / NMR / 測定技術開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多様な溶液状態でタンパク質の立体構造解析が可能なNMR法を用い、バイオ医薬品の立体構造的評価を製剤条件で非侵襲的に実現する新たな技術の確立を目的としている。 バイオ医薬は重水素標識を行うことができず、低温保存条件(4℃)での観測を行う場合、溶液中での見かけの分子量は本来の分子量の約1.5倍となり、200Kを超える超高分子量領域に対応できるNMR測定法が必要となる。一方、高分子量領域でのNMR観測は、従来、重水素化を前提としてきた。そのため、研究目的の達成には新たな測定技術の開発が必要であった。 そこで本年度は、新たな解析手法、15N観測CRINEPT法を開発することでこの問題の克服に当たった。 15N観測CRINEPT法は、研究代表者が近年開発した、非重水素化条件での高分解能観測が可能な15N観測TROSY法(Takeuchi et al, J Biomol NMR, 2015 & 2016)の利点を保持しながら、全く異なる磁化移動方式を取り入れることで超高分子量領域での感度を大幅に改善したものである。シミュレーションを行った結果、15N観測CRINEPT法は、超高分子量タンパク質に対して従来法(15N観測TROSY法)に比して10倍以上の感度増強を、分解能を犠牲にすることなく達成することが可能であった。そこで、15N観測CRINEPT実験スキームを構築し、実際にシングルリングプロテアソーム(分子量180K)およびアポリポタンパク質-脂質複合体(複合体の分子量200K)に対して適用したところ、非重水素化条件、低温で良好なスペクトルを得ることに成功した。よって、本手法を用いることで、バイオ医薬品の立体構造的評価を製剤条件で非侵襲的に実現できる見通しが固まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初目標は15N観測CRINEPT法の開発による超高分子量条件への対応であり、15N観測CRINEPT法をシングルリングプロテアソーム複合体(分子量200K)に適用したところ、非重水素化条件、低温で良好なスペクトルを得ることに成功したことから、当初目標を十分に達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、15N観測CRINEPT法を用いたバイオ医薬評価法を確立する。具体的には、確立した15N観測CRINEPT法を高分子バイオ医薬品の一種である抗体医薬品に応用し、その実用性を検証する。
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