2018 Fiscal Year Research-status Report
上皮系細胞で低酸素非応答的に産生されるエリスロポエチンの機能解析
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18K19416
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 律子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40226262)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | エリスロポエチン / 腎性貧血 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
出生後のエリスルポエチン(EPO)産生は、主に、低酸素誘導的にEPOを産生することができる腎EPO産生細胞に依存している。したがって、腎EPO産生細胞が障害されている慢性腎障害患者は、重篤な貧血(低酸素)があっても十分なEPOを産生することができず、EPOの補充療法が必須である。本研究では、私たちが見いだしてきた、「低酸素非応答的にEPOを産生するポテンシャルを有する上皮系細胞」に着目して、慢性腎障害患者(腎EPO産生細胞は障害されているが上皮系細胞は健常である)における「異所性EPO誘導」が腎性貧血の治療法として確立可能かどうかを検討することを目的とする。EPOは、転写翻訳されたあとにジスルフィド結合や糖鎖付加などの翻訳後修飾を受けて安定で機能的、また、ホルモンとして生体内移動が可能となるため、異所性に産生されるEPOと腎臓で産生されるEPOの機能的異同を検討することは、臨床応用可能な治療薬創出のための大規模スクリーニングを開始する上で、必要不可欠である。本年度は、EPO遺伝子転写開始点付近に強力な人工的プロモーターを導入したmIMCD細胞を樹立した。また、マウス骨髄を用いて赤芽球コロニーアッセイを行ない、同細胞の培養上清中に赤芽球コロニーを支持する因子が存在することを確認した。さらに、ELISA法で上清中のEPO蛋白質の存在を確認した。このことから、通常、EPOを産生しない上皮性細胞から、赤血球分化誘導機能をもつEPOが分泌されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上皮系細胞では、EPO遺伝子の発現が上昇することは分かっていたが、その転写産物が機能的なEPOに翻訳することは分かっていなかった。本年度の解析により、上皮系細胞から赤血球分化誘導機能をもつEPOが細胞外に分泌されることを明らかにする事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外に分泌されるEPOが血流にのって造血組織まで到達しうるか、造血組織での赤血球造血を誘導できるかを検討する。そのために、恒常的にEPO遺伝子発現を抑制している転写因子の結合領域に変異を持つマウスを作成する。本マウスでは、恒常的なEPO遺伝子発現抑制が解除されると予想されるので、本マウスの上皮系細胞でのEPO遺伝子発現について、血中EPO濃度、造血組織の解析を行う。
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Causes of Carryover |
2018年度に、CRISPR-Cas9法を用いて遺伝子改変マウスの樹立を試みたが、候補と考えられるファウンダーマウスを1匹歯科樹立することができなかった。再度樹立を試みる必要がでてきたため、樹立に係る費用を次年度に繰り越しした。
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