2018 Fiscal Year Research-status Report
ストレスセンサーKeap1のタンパク質構造解析に基づく生体防御機構の解明
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18K19417
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 雅之 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50166823)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | Nrf2 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化ストレスや外来異物に対する生体応答系の破綻は、様々な疾患発症と密接に関わる。このようなストレス関連疾患の発症を未然に防ぐ目的で、生体は環境ストレスに対して迅速に応答し、恒常性を維持する仕組みを保持している。Nrf2は酸化ストレスや異物・毒物代謝に関わる酵素群の遺伝子を統一的に制御しており、生体防御の要として働く転写因子である。Nrf2活性化による強力な生体防御機能の増強作用は大きな注目を浴びており、その作用の様々な疾患の予防・治療への応用を目指して、国内外で多くのNrf2誘導剤の開発計画が進行している。Nrf2は、非ストレス刺激下ではKeap1-Cullin3(Cul3)を構成因子とするユビキチンE3リガーゼ複合体によりユビキチン化され、プロテアソームにより迅速に分解されている。Keap1は、ユビキチンリガーゼ複合体の基質認識アダプターとして機能するだけではなく、外来性ストレスのセンサー分子としても機能する。例えば、Keap1が酸化ストレス刺激を感知すると、同複合体はユビキチンリガーゼ活性を失いNrf2のユビキチン化反応は停止する。その結果、分解を免れて安定化したNrf2は核内に蓄積して、抗酸化剤応答配列(ARE)に結合し、種々の標的遺伝子の転写を活性化する。 当該年度は、ストレス応答においてNrf2活性化を惹起する分子基盤、特にKeap1によるNrf2のユビキチン化反応に対する調節機構の解明を目指し、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡解析を行った。X線結晶構造解析については、現在までにKeap1-Cul3複合体の共結晶の取得に成功し、現在より高品質の結晶の取得のための条件検討を行っている。また、クライオ電子顕微鏡解析については、Keap1-Cul3複合体の二次元平均像の取得に成功し、現在より分散性の高いサンプル調整の条件検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
X線結晶構造解析については、今後、現在より高品質の結晶の取得のための条件検討を行う。また、クライオ電子顕微鏡解析については、今後より分散性の高い高品質のサンプル調整の条件検討を進める。 この他、Keap1-Cul3複合体の構造を明らかにすることと並行して、Nrf2誘導剤がKeap1センサーシステイン残基を修飾することにより、Keap1-Cul3複合体にどのような構造変化を引き起こすのか明らかにして、細胞内で実際にNrf2ユビキチン化を停止する分子メカニズムの解明に挑戦する。解析方法は、結晶構造解析・クライオ電子顕微鏡法に加えて、動的構造変化を捉えるためNMRを用いた構造解析を試みる。以上の解析方法を駆使して、Nrf2誘導剤の有無によるKeap1タンパク質の動的な構造変化を明らかにし、Keap1によるユビキチンリガーゼ活性の調節機構解明を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度にNMR解析によるKeap1-Cul3複合体の構造解析を行う予定だったが、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡解析が順調に進んだため、計画を変更し、この2解析に注力したため、未使用額が生じた。このため、NMR解析は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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Research Products
(29 results)